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ゴッドブレス  作者: 砂。
6/7

5、バット君 その2

読んでくれている方、本当にありがとうございます。

誰かが読んでくれていると信じ、投稿を続けようと思います。


 あれからバット君は毎日公園カラスに現れた。

 約束もしていないのに、毎日。

 

 自分がどれだけ喧嘩に強いだとか、学年のマドンナである六瀬って女子がバット君に、

「ぜってぇ惚れてる」

 だとか、クラスの奴ら全員ダサくて一緒に遊びたくないだとか、そんなことを伝えるために毎日。

 平日だろうが、土日だろうが、祝日だろうが、開校記念日だろうが、関係なく現れバット君のバット君によるバット君のための”かっけぇ話”を聞かされた。

 まじありがてぇ。くそだ。


 時々バット君はタバコを三本持ってきた。

 どうやら前に、親のタバコを箱ごと盗んだのがバレてこっぴどくやられたらしい。

 親にバレてなんて、もちろんバット君自身プライドのかたまりから聞いたわけではないけど、ジョーがバット君の家の前をたまたま通り掛かった際に、母親から大声で怒鳴られているのを聞いたらしい。

 それからバット君は俺達の分だけ持ち出した。


「なんでいつも三本なの? バット君やんないの?」

 と聞くと、

「いやいい、俺はもう家でめっちゃ吸ってきた。それに、これ以上吸うとアレルギー出ちゃうから」

 そう言ったバット君のTシャツからはいつも、仄かな柔軟剤の匂いがしていた。


 そんな日々が数ヶ月続き、公園カラスに、三人の輪の中にバット君がいるのが当たり前になっていた。

 ある日、いつものように三人で公園カラスに行くと、バット君の代わりに先客がいた。

 見覚えのある奴らだ。バット君の同級生の、名前は……、名前は知らないな。五人くらいいたけど、一人も。


「おい!」


 そいつらの一人が俺達に気が付いてがなり声を上げた。

「なに?」

 そう返すと、「なに? じゃねーよ」と五人でこちらに歩いてきた。

 ランドセルを背負った一個上のヤンキー達は、睨みをきかせこう叫んだ。


「お前らん中にタバコ吸ってる奴いんだろ!? 調子乗ってんじゃねーぞ!」


 声変わりの始まっていない甲高い声が公園カラス中に響く。

 彼の主張に、正直呆れた。

 例えば、小学生でタバコなんか吸ったらだめだ! と怒られるならまだわかる、理解できる。

 だけど、彼はきっとこう言いたいんだ、年下がタバコ吸ってるとは気に入らん! それは調子に乗って年上を馬鹿にしている証拠だ! と。


「いないよ、吸ってる奴なんかいない」

 ため息混じりに答える。

「はあ?」と一個上は納得のいっていないって様子で、相変わらず睨みをきかす。

「お前らがタバコ吸ってるってバツの野郎が言ってんだよ!」

 バツっていうのはバット君の同級生の間でのあだ名だ。

 あだ名の由来? 知らないよ、興味ない。

「だから、いないってば」

 続けてそう答えると、俺は胸ぐらを掴まれ、「てめー! なんだよその態度!」と顔をこんなに近づけて言うので唾が飛んできて臭かった。


 そのときだった、俺の胸ぐらを掴んだ奴が真横に吹っ飛んだのは。

 テツだ。テツが奴の横顔ぶん殴った。


「あーあ」って言ったのはジョー。


「てめー! ぶっ殺すぞ!」とか、「舐めてんのか!」とか、「喧嘩売ってんのか!」とか言ってるのは一個上の奴ら。


「もう喧嘩だろうが、馬鹿じゃねーの」って言ったのもジョーだ。


 それからジョーは一人に走っていって、ドロップキックをかました。

 テツはもう俺には止められない、アイツ小五の時点で身長160センチくらいあったから、暴れ始めると手が付けられない。

 俺は走ってきた奴二人にダブルラリアットをお見舞いした。

 勢いよく地面に叩きつけたおかげで、それだけで片が付いた。

 立ち上がると、もう喧嘩は終わっていた。

 というか、残りの奴らもテツとジョーにのされていた。


 一人、倒されたまま、「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣いている奴がいた。

 テツがそいつに近付いていって胸ぐらを掴むと、拳を振り上げた。

「もういいべ、テツ、これ以上は意味ねーよ」

 ジョーが言うと、テツは掴んでいたTシャツをパッと放し、

「コイツらだせーな」

 と吐き捨てた。


 その日からバット君は公園カラスに来なくなった。どうやら学校にも来なくなったらしいというのを、風の噂で耳にした。

 バット君に何があったのかわからないけど、きっと、俺たちの行動の”皺寄せ”がバット君に向いたのだろう。

 でも、年上の襲来はおそらくバット君のやった行動、発言の皺寄せだと思うから、それこそ因果応報ってやつだ。


 それからバット君が小学校を卒業するまで、三人のうち、誰もバット君の様子を気にする者はいなかった。

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