3、ジョーとテツ その2
不定期に更新していく予定です。
読んでいて吐き気がするとか、純粋につまらないとか、話全然進まないなとか、あの、是非ご感想をお待ちしております。
どうかよろしくお願いします。
テツは体がデカくてジョーとは対照的だ。清潔感という言葉からはかけ離れていて、今日も、夏だってのに、薄汚れた白いナイキのパーカーに、ダサい黒いステッチのブルージーンズに身を包んでいる。
更に残念なことにジョーの悪ふざけの所為で、いつものテツコーディネートはビショビショだ。
それにテツは髪の毛が伸びたり縮んだりした、その点は俺と同じだ。
テツはおしゃべりで、俺たち三人の中でも率先して話題作りに励むのはテツだし、学年でも友達が多い方だ。
ガタイの割には運動音痴で、球技なんかは絶望的だった。
野球ではグローブをうまく使えないので、飛んできたボールを持ち前のデカい体に当て、落ちたボールを拾って投げる。
だからフライでもアウトは絶対取れない。
「おい! ジョー! やめろよ! むしろさみーよ!」
「だからごめんって! わざとじゃないからさー」
「なぁんだ、わざとじゃないのか……いやいや! 嘘つけ! 絶対わざとだろ!」
テツは心が広い、ジョーの悪戯にも、俺の悪態にも反論はするけど、キレたりしない。
あーそういえば、テツが困った姿なら見たことがある。
テツが転校してきた女子に告られた時だ。小五の時だったかな?
これが、可愛くもなけりゃ、ブスでもない、なんとも特徴のない女だった。
放課後、なんともベタに校舎裏に呼ばれたテツは、初めて異性から愛の告白を受けた。
「好きです」
ジョーと一緒に校舎の角に隠れてその一部始終を見ていた。
夕日に照らされた、その転校生は、頬が赤らんでいて。弱々しく、柔らかな声の中にはある種の決心が込められているように聞こえた。
その姿、表情、声、状況、ぜんぶ含めてその転校生は、ポテンシャル以上に可憐に見えて、少し、テツに嫉妬を覚えた。
そうか、女子ってのは、こんなに可愛くなるのか。なんかずりーな。
さて、そんなことはどうでもいいんだ。
テツがなんて返したか、その返答だ。
「…………なんで?」
そう言ったテツは、「それだけ? じゃ、行くわ」と言ってダッシュでその場を去ってしまった。
転校生にバレないように、俺達はあわててテツを追って公園に行くと、ブランコに揺られたテツの姿があった。
「よう」
「おう。あれ? お前らどこいたの?」
「……別に」俺がそう返すとジョーが、
「いや、テツ、お前、なんではないわ!」
そう言ってジョーはバカ笑いをした。
「え、ちょ、なんでそれ知って……!?」
テツは慌ててブランコから降り、ジョーに詰め寄った。
「かわいそうになー、あの子泣いてたよ。テツよー、女泣かせるなんて罪な男だよなー」
「……おいジョー、泣いてるとこなんか見てねーだろ」
流石にテツにも、あの転校生にもいたたまれない気持ちになって、ジョーの茶化しを強制終了させた。
テツが安心したような、寂しそうな笑顔を浮かべて、「そっか」と言ったのを忘れられない。
”何をしても、何を言っても”怒らないのは俺達にだけで、他の奴に対しては実のところ怒りっぽい。
テツは、同級生が誤って跳ねた墨汁を袖に付けられたことがある。
少し、ほんの少し、元々きたねーパーカーの袖に本当に少しだけだ。マジックペンの先端よりも小さい点をご自慢のパーカーに付けられ、テツは無言で相手をボコボコにして泣かした。
テツ曰く。
「量がどうこうとか、そんなのは重要じゃない。全然だ。誰にやられたか、それが重要だ。悪気がなかったとか、あったとか、わざとじゃいとか、そんなの全然! もう全っ然! 関係ないね! 俺はアイツが嫌いだ、嫌いな奴からは何をやられても嫌だし、何をしてくれても嬉しくなんかない」
そう言ってニヒルっぽく笑ったテツの表情に少し腹が立った。
そんなニヒルデカ小学生テツは今なにしているかと言うと、両手を広げ太陽に自分の体を晒して何やら叫んでいる。
「太陽! まだ沈むな! お前にはまだ役割が残っている! さあ! 乾かせ!」
とにかく、これがテツだ。