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ちょっとリアルが忙しくて執筆に時間をどうしても割けない状況です。今回短いですすいません!
空にはどんよりと雲が立ち込め、湿った風が吹き抜けていく。
風に揺さぶられた木々の擦れる音が聞こえ、草々の青臭い匂いと土の香りが鼻腔をくすぐる。
見るもの、聴くもの、感じるもの全てが鮮明で自分が今作り物の世界に居ることを忘れてしまいそうになる。
「……ここまでリアルだと現実世界との区別がつかなくなりそうで恐ろしいな、、、」
俺の手には今、一丁のスナイパーライフルが握られており、ずっしりとした質感がより一層高揚感をもたらしてくれる。
感覚全てがリアルと遜色ないのに手に持っている物が一番非現実的とはこれいかに。
コイツは全長は83cm重量5.0kgという狙撃銃にしては小柄な狙撃銃で、その見た目は……う〜む、可もなく不可もなく……
撃てりゃいいんだよ撃てりゃ!
この子は…アレだ、容姿は普通だけど性格がいいからそれなりに付き合いの長い異性からモテる系のアレだ。
「何神妙な顔して銃を眺めてるんだよ。……お前ってひょっとしてヤバい奴?」
なんて事をいうんだこいつは……俺とお前って数分前に初めて会ったばっかだよな?
「失礼な、俺はただ、この子の性格が素晴らしいって話をだな……」
「………」
………止めろ、その“あぁ、こいつそういう系か”みたいな哀れみの眼差しはヤめろ。
「あぁ、お前ってそういう……」
「止めろや!!お、俺はそんなんじゃねえよ?別に毎日練習終わりに壁に飾って一人でニヤけたりしてねえし?」
「一人でニヤけてる自覚はあるんだな……」
「……ハッ!?しまった!嵌めやがったな!」
「いや嵌めてないしお前が勝手に自爆しただけだろ」
くそぉ……
なんて戯れていると分隊長から無線が入った。
『200m先に敵や。敵の数は三人、そっちから見えるか?』
「いや、ここからは見えない。ちと移動する」
『了解。今んとこ残りの二人は見えへん。戦闘の痕跡も無いから多分何処かに隠れとるわ』
「了解。見つけ次第報告する。しばらくステイで」
『うん。とりあえず今補足してる3人は動く気配がないから待ち伏せだろうね』
俺たちの分隊は四方10kmのマップの南、小高い丘が連続する丘陵地帯を進んでいた。
300mほど先を行く先行部隊は三人。
敵の位置がわからない状態で無闇に突撃すると思わぬ横槍が入って悲惨なことになりかねない。
このゲームは基本的に“待ち”のチームが圧倒的に有利な仕様になっているので何とかして突撃の切っ掛けを作りたいものだが……ふーむ、どうしたものか。
「狙撃ポイントに到着。偵察始めるからもうちょい待って」
『了解〜。できたらそのままスポットし続けて。あと援護射撃してもいいけど誤射には気をつけてね』
街を若干見下ろせる小高い丘に陣取り速やかに偵察を始める。
スポットというのは敵を光学サイト内に収めると敵を自動的にマーキングしてくれる機能でスポットした敵の位置情報を分隊内のマップに共有できる。
ただしADS(光学サイトを覗きこんで狙いをつけること)を中止したり、光学サイトから目標を外したりすると5秒でマーキングが外れる仕組みとなっている。
実はこのスポットが超有能で、まるで車のナビのように敵の向いている方角まで表示してくれるため突入のタイミングなどで大いに役立つのだ。※豆知識
「ん。敵発見。三階の右から二番目の窓際だ。もう一人は……見当たらないな」
敵は3階建ての廃墟ビルにいた。街の一番外周に陣取っているということは、やはり外からやって来る部隊を待ち伏せしていると見て間違いなさそうだ。
『でかした。やっぱ建物ん中に隠れとったか……これはちと骨が折れそうやな』
「なあ、ちょっと考えがあるんだが……」
『考え?』
「ああ、今見回したところ他の部隊は居なさそうだから俺付きの援護兵をそっちに加勢させたい」
『ふむ。確かに今回の戦闘の間だけでも前線の火力が上がるのはありがたいな』
「それともう一つ。彼と合流したら二人一組であの廃墟を挟み込むように散開して欲しい」
『なんでや?わざわざ戦力を分断する必要もあらへんやろ』
「まあそう言わずに聞いて欲しい。今回の戦闘、初弾は俺が撃つ」
『ちょっと待て!?撃つったってお前さん相当離れとるやろ?』
『僕も、それはちょっと怖いな〜。当てられない可能性が高いのに初弾を任せるのはちょっと……』
「あぁ、そういうだろうと思ってな、そこで散開することが役立つ訳だ」
『………なるほど!お前さんが当てようが当てまいが敵の注意はそっちへ向く……その間に俺らが距離を詰めて一気に叩けっちゅうことやな?』
「それだけじゃない。未だに敵の一人が見つかって無いだろ?急襲した時に固まっていたら死角から一掃される可能性もある。距離を取って戦えばその見つかっていない奴が片方を撃っていても、もう片方が対応できる」
『な、なるほど……お前さんこのゲーム確か初めて、だよな?』
「ああ。だからこれは単なる思いつきに過ぎないしどうなるかも分からない。どうだ?やってくれるか?」
『……分隊長権限譲渡したろか…?』
『すごい……多分君の案が無かったらウチの分隊長脳死で突っ込んでたよ。それに比べたら雲泥の差だね』
いや、それはあかんでしょう。ちょっと考えればこんなことすぐ思いつくのに。
「そうか、ありがとう。それじゃあ合流次第手筈通りに動いてくれ」
○○○
『こちら “右上腕二頭筋部隊” 配置についたで』
『こ、こちら、 “左じょ、上腕三頭筋部隊” 、配置についたよ……ねぇ、こんな言いにくい名前付ける必要あった?』
「………………やべぇ奴って、お前じゃねえか!援護兵!!」
『失礼な。筋肉をバカにするんじゃない。お前が走れるのは何のおかげだ?お前が銃を握れるのは何のおかげだ?お前がものを考えられるのは、何のおかげだァ?!——そう!筋肉こそが正義!筋肉が———おぶぅぅっ!? はひふんはほのひゃほふ!?』
『馬鹿っ!そんな声出したら見つかるだろぉ!?………あぶないところだった…』
……ったく…危うくアイツのせいで作戦が水の泡となるところだった。
あんだけ俺に失礼な口きいてきた癖に、そのあとなんか静かだなーって思ってたら急に喋り出すからビビったわ!
……それと言っておくが、考えることができるのは筋肉のお陰では無いからな?
アイツの頭の中は筋繊維でできているに違いない。そうに違いない。
これからあいつのことは脳筋肉ダルマムッツリと呼ぼう。
「脳筋肉ダルマムッツリのことは置いといて、それじゃ、作戦を始めるとしようか」
『誰が脳筋肉ダルマムッツリだ?!……俺はムッツリじゃねぇ!』
『シッ!黙っ……「『『え、そっち?』』」』
………やったぁ!初めて分隊員と心が通じ合った気がしたよ♪
約一名を除いてな。
「……もういいや。俺が撃ったら敵はどうせこっちに弾をばら撒いてくるはずだから、しばらく待ってから突撃して欲しい」
『『『『了解!』』』』
俺のスコープはしっかりと敵の姿を捉えていた。
どうやら仲間内で談笑しているようで笑顔が絶えない。
ま、その笑顔も今に消える事になるがな。
———初めての対人戦闘を前に自分の顔が無意識にも喜悦に歪んでいるのを俺は気が付かなかった———
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