ヤンデレ姉に対抗するために悪魔召喚をしたら紫式部が出て来くるし、兄は頭に釘バットを食らって記憶喪失で下半身裸で警察のお世話になってます!
子ども図書館で借りた悪魔召喚の本を片手に、自室の床に禍々しい魔方陣に向かって祈りを捧げた。
「エロデスメッサホモ、エロデスメッサホモ」
呪文を唱えると、魔方陣からCO2がプシューっと噴き出した!
「成功だ!!」
念わずガッツポーズ!
──バンッ!
「何をしている!」
扉が跳ね開き、悪鬼羅刹の如き乳を持った義理の姉が、今にも淫行せしめんとばかりに裸エプロンで仁王立ちをしている。
「もうお姉ちゃんのイジメには耐えられない! 俺は悪魔召喚でお姉ちゃんを成敗する!」
「……それが悪魔か?」
姉が指差した魔方陣には、若い女性がちょこんと座り込んでいた。大和撫子だ。
「どうも、紫式部です」
「うわぁぁぁぁ失敗したぁぁぁぁ!!!!」
天国から地獄。
姉が壁に立てかけていたであろうと思われる釘バットを手にした。
御丁寧に釘は一つ一つ手作業で曲げられている。
「ヒヒ、釘バット五回はI Love Youの印だからね♪」
「ヒィィィィ!! そんなんで殴られたら死んじゃうよ!!!!」
「殴らないわよ?」
「えっ?」
「直腸」
「まさかの挿入!? 一発で昇天!!!!」
男は紫式部の背中にしがみついた。
「わたしは裸十二単です」
「あ?」
紫式部の一言で姉はキレた。
普通に十二単を着ているだけだが、頭に『裸』とつけただけでキレる煽り耐性の皆無な姉である。
「ニ〇リで買った釘バットさんをテメェの口に入れてやらぁぁぁぁ!!!!」
釘バットが風を切る。
しかし紫式部は十二単に隠していた枕草子でそれを受け止めた。
「友達から借りパクしてきた随筆はだてではない」
「なんかやな人!? それより大丈夫!?」
「わろし(悪いの意)」
「あ、それっぽい」
釘バットを随筆書物で返された姉は少し怯んだ。
退いた拍子に悪鬼羅刹の如き乳が良い感じに揺れた。
「流石の紫式部さんでもお姉ちゃん相手じゃ……」
「いとわろし」
「こんな時、お兄ちゃんが居てくれれば……!!」
その時、姉がにやりと笑った。何かやった顔だ。
「あのホモ野郎なら、今頃ムショだろうね」
「えっ!? 兄貴に何をしたのだ!?」
──時を遡ること三時間。
「すみません。記憶喪失です」
一人の男が交番に現れた。下半身裸で。
「ん? 出頭かな?」
交番勤務のポリスが手錠を取り出した。
「目が覚めたら下半分ありのままで、しかも頭痛いんですが僕は誰ですか?」
「あーはいはい。この時期は皆そう言うんだよね」
椅子に座らされた男が、チラリとポリスのテーブルにのった熱々シチューに目をやった。
「ん、ああ。妻の手作りでね」
ポリスが書類を取りに少し目を離した瞬間、男はシチューをペロリとしてしまった。
「──!?」
戻ったポリスが慌てふためく。
「シチュー食べたな!?」
「ケツが食っちまったよ」
「熱々のシチューをケツからだと!?」
「ああ」
「後で妻に味の感想を送らないといけないんだぞ! 変な男がケツから食べちゃったなんて送ってみろ! 病院を紹介されてしまうぞ!?」
「中々に薄味だったと伝えておけ」
「ガッデム!!」
ポリスは机をちょっと叩いた。
「だが思い出した。俺はシチューを食べたかったんだ」
「は?」
「しかし何故シチューを食べたかったのかが思い出せない……」
「はいはい、春めいてるね」
ポリスは泣きながら妻にメッセを送った。返事は『保険証持ってるよね?』だった。
ポリスが男に手錠をかけるかどうか迷った時、ふと思い出したような顔で外を見た。
「そうだ、家が近いから妻に事情を説明してくれないか? 勿論下は偽りの姿で頼む」
ズボンを差し出す。下半身だけポリススーツだ。
「なんならビーフシチューを食べていってもいいぞ?」
男の頭に新鮮な空気が押し寄せた。
カーテンの隙間から朝日が差し込むように、忘れていた記憶が蘇る。
「そうだ! 最愛の弟とローストビーフだったんだ!!」
「事件の香り」
慌てて駆け出す男の後ろをポリスが追いかける。
この男が居なくなってしまえば、シチューは迷宮入りなのだから。
「へへ、これでお姉ちゃんと一つになれるね」
乙女にあるまじきフェイスで義理の弟に擦り寄る姉。
──バンッ!
「そこまでだ!」
「兄貴!」
「チッ! ホモ野郎が来やがったか!」
ドアを跳ね開け、兄が弟と姉の間に押し入る。
アイロンでピシッとしたポリススーツからは、何故かシチューの匂いがした。
「いとくさし(とても臭いの意)」
紫式部は姉のBL本で懐柔されてしまっている。
ソファで寛ぎながら抹茶ラテを飲んでいる。
「貴様! 愛の儀式を邪魔する気か!?」
「俺は思い出したんだ! 弟とローストビーフの貼り合いをするってな!」
どっちも最悪。
弟は今にも逃げ出したい衝動に駆られた。
キッチンにはシチューの鍋が置いてあった。
きっと夕食だろう。
「本官シチューには、ちとうるさいぞ?」
いつの間にか居やがったポリスがシチュー鍋から一口失敬をした。
「しまった! そのシチューには惚れ薬が!!」
「本官には最愛の妻がいる。惚れ薬程度で今すぐホテルに行こう強制捜査だ」
「止めろ! 離せ!」
ヤンデレ姉がポリスに連行されてゆく。
「おっ、今日はシチューか」
兄がシチューをin the darkした。
「待て! 俺もシチュー家族に射れてくれ!」
ポリスと姉の後を追いかけ、兄が消えた。
「……イヌの餌にしよう」
弟は庭にシチューを置いた。
臭いを嗅ぎつけた近所のノラ犬が100匹ほど押し寄せ、次々と姉の拉致られたホテルへと押し寄せた。




