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縁無の学校  作者: PEN
起ノ章
9/78

7話・天才

 

 入学式からちょうど一週間が経った今日。オレは、昼休みに天鳴(てんめい)と一緒に昼ごはんを食べる事になった。

 午前中最後の4限目の授業が終わると、すぐに教材等をカバンにしまって廊下に出る。

 すると、そこには既に天鳴がいた。


 「……早いな」

 「そうかな?」


 彼の教室は1階。チャイムが鳴ってすぐにこちらに向かって来たのなら分かるが、教材等をしまっている時間を考えたら、ここまで全力疾走したとしか考えられない。

 横目で彼を見てみたが、呼吸が荒い様子も無いのでそういう訳では無いのだろう。


「行こっか」

「お、おう」


 だが、そんな意味の無い事を考えても仕方無い。

 オレは彼と横に並んで、食堂に向かう事にした。

 途中、A組の教室の横を通り過ぎた時に、天鳴のクラスメイトと思われる生徒に驚きの視線を向けられたが、天鳴が反応しなかったのでオレもスルーした。

 食堂に着くと出入口近くにある券売機に向かい、オレはラーメンを、天鳴はカレーを注文した。

 先にオレの方が注文をしたが、ラーメンだと麺を茹でる時間があるせいか、彼のカレー (ダジャレじゃねぇわ) が先に出来上がったようだ。

 なぜか申し訳無さそうな顔をしながら隅っこのテーブルに向かって行く。

しばらくするとオレのラーメンも出来上がったようで、それを持って天鳴が待つテーブルに向かった。


「またせてご─────」


 食べずに待っていてくれた天鳴に謝ろうとした時。オレは、テーブルに彼以外の人物が座っている事に気がついた。


「あなたは……」


 オレはラーメンを置きながら、ゆっくりと天鳴の横に座る


「すまないな。彼が貴様の連れだったようなので話を聞こうと思ってね?」

「はぁ、そうですか……」

「ねぇ、こいつ誰? ボク何か生理的に受け付けないんだけど?」


 耳元でそう囁いてきたので、オレは彼らを互いに紹介する事にした。


「こちらは、1年A組の(たば) 天鳴(てんめい)。そして、こちらは、……えっと?」


 ここで、オレは彼のフルネームを知らない事に気がついた。

 それを察したのか、彼は軽く咳払いをしながら自らを明かす。


「私は、3年A組の(いかづち) (とおる)だ。よろしく」

「え!」


 それに対して、天鳴は驚きの声をあげた。


(いかづち)って、あの3年間成績1位を取り続けたっていう、あの(いかづち)先輩ですか!?」

「"あの"とは、どれだか分からないが、同姓の人物は学校には居ないから、その"あの"で間違い無いだろう」


 オレは内心驚きつつも、冷静に状況を確認していた。


「その、(いかづち)先輩が何か?」

「1つ貴様に少し伝えたい事。いや、忠告(ちゅうこく)があってな」


 そう言って、こちらに視線を向けてくる。


「貴様。自らの『才能』を隠しているだろ?」

「……。どういう意味ですか?」


 できるだけ()を空けないようにしたが、咄嗟の事で少し遅れてしまった。

それを、雷は見逃さない。


「まだ一週間だ。この学校について詳しくは知らないだろう」

「そりゃあ、もちろん」

「なら1つヒントをあげよう。この学校で実力を隠す事は失格。───つまり、退学を意味する」

「退学?」

「そうだ。ある一定の基準を満たさない生徒は容赦なく切り捨てられる。それがこの学校だ」


 横から天鳴が心配そうに見つめてくるが、無視をして話を続ける。


「言いたい事は何となくですけど分かりました。実力を隠していると基準を満たせずに退学になるかもしれない、という事ですね?」

「そうだ」

「それってオレ達に言っていい事なんですか?」

「実を言うとあまり好ましく無い。だが、貴様のような人材を失うのはこちらにとって不利だと思ってな」

「……。それ、オレにだけ言うつもりでしたよね? 天鳴が横にいる状態で話してもよかったんですか?」

「別に構わんだろ。おそらくだが、1年A組は全員それは把握している筈だ」


 天鳴は黙って頷く。


「クラスによって、与えられる情報量が違うのですか?」

「いいや、彼らが自力でつき止めた事だ」

「なるほど……」


 オレはここで、1つの仮説を立てた。

 それに答えるように、雷は言う。


「明日返されるであろう小テスト。それで粗方学校の仕組みを理解できる筈だ」


 そう言って席を立つ雷。


「忠告ありがとうございました」


 オレは立ち上がりながら彼に礼を言った。

 そして、 "それとは別に伺いたい事がある" と告げる。


「何だ」

「先輩は先程、オレが退学する事はこちら側に不利になると(おっしゃ)いましたよね?」

「……言ったかもしれないな」

「その、こちら側とは、どの側ですか?」


 雷はゆっくりとこちらに振り向いた。



「時期に分かる」



(なるほど。この学校には色々と何かがありそうだな)


 オレは内心、とてもワクワクしていた。







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