表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁無の学校  作者: PEN
起ノ章
6/78

5話・登録


 オレは、天鳴(てんめい)と別れると、すぐに那谷(なたに)が待っているであろう南館に向かう事にした。

 階段を上ると、人と人との間を縫うようにして4階の廊下を進み、東館への扉を開ける。相変わらず東館には誰もいなかったので全速力で駆け抜けた。そして南館に通じる扉の前で一度止まる。

(結構待たせちゃったな……)

 一度深呼吸をしてから、ゆっくりと扉を開ける。


「………………」


 そこには、無表情でこちらを見てくる那谷(なたに)の姿があった。


「……ごめん」

「………………」

「いや、本当にごめんって」

「……ねぇ」

「はい」


 彼女の顔に表情が戻ってきた。しかし、それは"怒り"の表情。

 瞬間。彼女の声が廊下に響き渡った。


「ねぇ、なんで置いて行ったの!? さっき『この学校は何かを隠している。それを暴かないか?』とかカッコつけて言ってたよね!? てか、普通女子を1人にしてどっか行きますか? いいえ、行きません! いや、まぁ、よく来ていた遊園地とかならまだ分かるよ? いや、本当は分からないけどさ。私はこの学校に初めて来たのよ? 登校初日よ? 入学式当日よ? そんな女の子を普通置いて行きますか!?」

「……はい。本当に……すいません。ぐうの音も出ません」


 身振り手振りをしながら怒る彼女に、オレは何1つ反論が出来なかった。


******************************


 ある程度、怒りが収まったのか。彼女は大きなため息をつくと、オレがいない間に見てきた南館の2階と3階の様子を話し始めた。


「2階は職員室とか、校長室とか、教頭室とかそういった感じの教師用の部屋がいっぱい。3階は被服室とか、調理室とか、まぁ、理科室以外の実技教室だったわ」

「ゴックン」

「何、ゴックンって?」

「いいえ、何も無いです」


 『何だよお前、1人でも行動できるんだったら置いて行ってもよかったじゃん!』というツッコミを飲み込んだ音とは言えない。


******************************


 オレ達はそのまま西館には行かず、下駄箱に下りて帰る事になった。


「な、なぁ、那谷(なたに)

「何? 私、少し落ち着いてるけど、まだ琉田(りゅうた)くんに怒ってるんだけど? それで、何か話?」

「いえ、何も無いです」


 流石にここまで露骨に"話しかけるなオーラ"を放たれると引き下がるしか無い。

 そのままオレ達は、ギスギスとした雰囲気のままに下駄箱で靴を履き替えた。

 なれない手つきで、脱いだ靴を自分の名前が書かれたロッカーに入れる。


「ねぇ、アンタ暇?」


 その時、そんな声が横から聞こえた。

 声が聞こえた方向を見ると、そこには千羽(せんば)と一緒にいた女がいた。


「暇って言ったらどうする?」

「暇だろうが、暇じゃなかろうが連れていく」

「拒否権無いじゃないか! なんで聞いた?」


 そんなオレと彼女のやり取りを横目に、那谷(なたに)は帰っていった。

 彼女は黙って、その姿を見る。


「フラれた?」

「いてこますぞ!」


******************************


 彼女についてくるように言われたので、オレは黙って後をつけた。


「ついた」

「早くね?」


 そこは下駄箱を出てすぐ右に曲がった所だった。もちろんそこには千羽(せんば)がいる。


「この距離ならお前から来てくれてもよかっただろ」

「ハハハ、まぁ、そう言うなよ。どうせお前はすぐに俺に感謝する筈だ」

「どういう意味だ」


 すると、彼は黙って1つのスマホを差し出してきた。


「これって……」

「そう。俺が今日校門で蹴飛ばしたお前のスマホだ」

「探してくれたのか?」

「そうだ」

「マジかよ、ありがてぇ」


 オレは彼が差し出しているスマホを持つ。

 そこで、彼に1つ確認をした。


「何かしたな?」

「お、バレたか」


 彼は不気味な笑みを浮かべる。


「ソレに俺の連絡先を登録しといた」

「は?」

「クラスメイトだからな」

「いや待てよ」

「それじゃ! よし、美咲(みさき)帰るぞ!」

「はい」


「いや待てよぉぉぉぉおおおお!」


 オレの声が虚しく響いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ