3話・静寂
卒業式後に行なわれたクラス内での簡単な自己紹介を終えると、オレ達F組は自由解散となった。
つまり、帰っても帰らなくてもいいよ〜という事。
大抵の学生はこういう指示を出された時は帰るだろうがオレは少し違った。少しでも早くこの学校の校舎の創りや特別教室の場所を覚えておこうと思い、残る事にした。
先程配られた大量の教科書類をカバンに詰めて、それを肩に担ぐ。予想以上に重たく一瞬体制を崩したが、すぐに立て直し教室を出て、校舎探検の旅に出かけた。
とりあえず教室の近くにあった階段を上り4階へと上がった。ここはH組〜J組までの教室がある階だ。オレが先程までいた3階とは違い、賑やかで、楽しげな雰囲気を感じる。
その時、後ろから。
「琉田君も校舎見学?」
という声が聞こえた。
振り返ると、そこには那谷がいた。
「そうだけど、『も?』」
「えへへ、そうなんだ! 私もご一緒していいかな?」
那谷は笑顔で首をかしげながら言う。
(え、まじかよっ。女子と2人で!?!?!???)
すると、オレが、ドキマギしながら色々と考えている間を、那谷は否定の意味の沈黙として考えたのか、"迷惑だったよね、ごめんねっ"と言って去ろうとしたので慌てて引き止める。
「べ、別にいいよ?」
「ありがとっ! 校舎見学はいいんだけど道に迷うのが不安だったんだ……。けど、2人ならきっと大丈夫だねっ!」
そう言って、彼女は再び笑顔を見せた。
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オレ達は他愛も無い話をしながら4階の廊下を歩いて、東館へと繋がる扉を開けた。どうやら各階にこのような扉があるらしく。それぞれの階が同じ階に繋がっているという基本的な形をしているのだろう。
オレは扉を後ろ手で閉めて、再び歩きだす。
その直後。入学式と同じような違和感を感じた。
「……静かだね」
那谷はそう言いながら、こちらの方を向いてきた。
オレは黙って頷き、廊下の先を見る。そこには生徒の姿が1人として無かった。
明らかにおかしい。
ここは、2年生のH組~J組の教室の前の廊下。この時間帯に生徒が一人もいないのは不自然なのだ。
そこで、オレは生徒会長の発言を思い出した。───────"担当の生徒がいない""不甲斐ない生徒達だった"──────── そこで、1つの仮説が浮かび上がってきた。
「「2年生のH組~J組はもういない?」」
オレと那谷は同じような事を同時に言った。
そして、お互いに目を合わせて確信した。
「なぁ、那谷」
「うん?」
オレは無意識の内に目を細めながら言った。
「この学校は何かを隠している。それを暴かないか?」
それに対して彼女は小さく頷いた。