27話・反射
翌日。オレは、授業中に隙を見つけては、昨日メモをしていた一枚の紙を見ていた。
そこに書かれているのは、刺客の疑いがある者達の名前。3年生、2年生の生徒の名前は両手で数えられる程度しか書かれていないが、1年生だけは、30人は書かれていた。
その紙をさっと見て、見覚えのある名前をピックアップする。
(2年生で顔と名前が一致するのは、榊ぐらいだな。1年生だと、天鳴、藤垣、柳、千羽、風見屋。3年生に至っては、誰1人として分からんな……)
情報の更新がされてなかったのか、1年のH、I、J組の生徒の名前もあった。
(それよりも、天鳴も刺客の可能性があるのか……)
今日の昼休みにでも、少し探りを入れてみる事にした。
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午前中の授業の終わりの告げるチャイムが鳴ると、オレは机に出していた教材をカバンに適当に入れて、天鳴のもとに向かおうとした。
ちょうどそのタイミングで、千羽がオレの前に立ち塞がった。
「あの、なんか用ですか? オレ、結構急いでんだけど?」
「急いでるかどうかは俺には関係無い。話がしたいんだがいいか?」
「急いでいるって言ったよな? 話はできない。またの機会にしようぜ。というか、せっかく連絡先登録してるんだから、そっちで話をしたらいいだろ?」
「話がしたい」
「いや、だか────
あまりのしつこさに声を荒らげようとしたが、千羽が耳元囁いた言葉は無視できる物では無かった。
「前の自習室での件だ」
これを言われると、大人しく従うしか無かった。
「分かったよ。少しだけなら付き合うよ」
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「あの日、俺はお前からこのメッセージを受け取った」
そこに書かれているのは、"放課後に2階の自習室に来てくれ"といった意味の物。
「そして、いざそこに行ってみると、J組の風見屋がいて、俺はそいつにボコされた。正直に言って、万全の状態でも勝てる気がしない相手だった」
「……」
「お前に聞きたいのは1つだけだ。あの時、なぜ、お前は俺を呼び出した」
それに疑問を抱くのは当たり前だろう。
用件を伝えられずに、場所と時間だけを伝えられ、いざそこに向かったら風見屋がいた。
別に隠す意味も無いので、正直に話す事にした。
「あれは、ど───」
しかし。
「あ?」
話が途切れたオレに、不機嫌そうな目を向けられたが、そんな事にいちいち構っていられなかった。
(今のって……)
視線の先。千羽の後ろを横切った人影に、オレの全関心が向けられた。
気が付くと体が動いていた。
(なぜ……!?)
背後から聞こえる呼び止める声を無視して、オレはその人影を追いかけていた。




