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縁無の学校  作者: PEN
承ノ章
32/78

23話・基地


「ここだよ」


 前を歩いていた秋川(あきかわ)校長が、こちらに振り向きながら言った。

 彼の前には、軽めの装飾がされた大きな扉があった。少し目線を上に向けると"校長室"と書かれたプレートが壁に埋め込まれている。


「ここが、秘密基地ですか?」


 秘密基地にしては目立つ所では無いだろうか、そんなオレの考えに答えるかのように、校長は扉を開けながら小声で呟いた。


「この中にあるんだよ」


******************************


 部屋の中に入ってすぐ左手にある巨大な本棚に近づくと、秋川校長や(いかづち)達はその裏に消えていった。オレも彼らと同じようにその本棚に近づくと、壁と本棚との間に人一人(ひとひとり)が通れる程の隙間が空いている事に気がついた。隠し通路と化したそこを進むと、扉を見つける事ができた。この扉は校長室の入口の扉ような装飾は無く、教室の扉と同じように地味な物だった。

 ふぅ、と軽く息を整えてから、その扉を開けてその向こうへと踏み入った。

 そこは、普通の教室の半分程の広さの部屋だった。

 中央には大きな机が置いてあるせいで圧迫感があり、より狭く感じる。壁の一面を見ると、何か白い布が垂れていて不思議に思ったが、それと向き合うようにプロジェクターがあったので、それがスクリーンだと分かった。


「こいつが期待の新入りって訳か?」


 窓側の壁にもたれかかっている男が、品定めをするような目をオレに向けてきた。足元には竹刀が転がっている。

 確か、生徒指導係の(くじゅく)先生だっただろうか。


「そうだよ。きっとこの子は大いに役立ってくれると思う」

「はい。これについては私も保証します」


 校長と(いかづち)がフォローに入ってくれたが、過大評価過ぎると思う。

 そんな事を考えていると、いきなり横から右手が差し出されてきた。

 顔を向けると、そこには見たことがありそうで名前が出てこない誰かさんがいた。


「歓迎しよう」


 微笑みながら、嬉しそうに言う誰かさん。

 流石に差し出された手を無視できるような性格じゃないので、答えるように握り返した。


「君、名前は何て言うんだ?」

琉田(りゅうた) (のぞむ)です」

「琉田君ね。よし、覚えた。俺の名前は、山城(やましろ) 貴文(たかふみ)。一応、この学校で生徒会長をしている者だ」


 ここでやっと、見覚えがある理由が分かった。入学式の時に挨拶をしていた生徒会長だった。何だかその時と雰囲気が違っていてむず痒くなってきた。


貴文(たかふみ)も挨拶したって事は、私も挨拶した方がいいのかな?」


 部屋の隅にいた短髪の女が、スマホをポケットに入れつつ近づいてきた。


「私は、3年A組の花編(はなあみ) (もも)。ももちゃんって呼んでくれてもいいよ〜」

「よ、よろしくお願いします。……ももちゃん?」


 違う世界の人間な気がして少し驚いたが、なんとか答える事ができた。


「ここにいる5人で全員ですか?」


 部屋の中を見回しながら言うオレに、ももちゃんが、扉の方を指差しながら "その子もいるよ〜" と言った。


「え?」


 その指が差す先を見ると、そこには同じ1年F組のクラスメイト。那谷(なたに) 明里(あかり)がいた。







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