14話・開戦
「何か、用か?」
蒲原は、怯えたような声で風見屋に声をかけた。
「あぁ、ここにG組とF組のリーダーが話し合ってるって聴いてよ……」
そう言って、オレと蒲原を順番に指をさした。
「お前らがそのリーダーだよな……?」
「え、あ、まぁ、俺はそうだが
「残念ながら、オレはF組のリーダーじゃない」
オレが蒲原に被さるように答えた時、ちょうどその呼び人がやってきた。
「なんだ? 思ったより人が多いが? 」
呼び人───千羽 京介は、背後にいつもの2人の男女を連れてやってくると、風見屋の取り巻き達を押しのけるように部屋に入ってきた。
「お前が、F組のリーダーか……?」
「あ?」
風見屋の問いかけに、千羽は睨んで答えた。
その対応が気に入らなかったのか、取り巻きの1人が襲いかかろうとしたが、主である風見屋の睨みにより抑えられた。
「まぁ、そんなに警戒しないでくれ……。俺は、J組でリーダーをしている風見屋 元牙っていうんだ……」
「ハッ! J組って言ったら最低レベルのクラスじゃねぇか! ゴミをまとめてるゴミリーダー様とは、お会いできて光栄です」
千羽は、ふざけた礼をした。
「……フフ、」
これには風見屋もキレたと思ったが、何故か彼は顔を伏せて笑っていた。
そして、上げた顔に先程のようなイケメンの面影は無くなっていた。
大きく見開かれた目。限界まで横に大きく裂けた口。舌なめずり。全てが先程までの彼のイメージを壊していた。
「フフフ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
室内、いや、校舎内に響くような大笑いをする風見屋。それに何か危ない物を感じたのか、千羽は背後に連れていた女、菜の山 美咲に部屋から出るように伝えると。背後に連れていた男、待川 雅人と並び、拳を構えた。
「ハハハハハハハハハハハハ、ハァ、ハァ、ハハハ……。面白ぇ! まさか、学校内で喧嘩をする気か? 停学、もしかしたら退学にもなるかもしれないぞ!? 」
「俺と、この待川は大丈夫だ。学校側から黙認されてるからな」
風見屋は、一瞬驚いたような顔した。
「この学校の仕組み……。気付いていたのか?」
「なるほど、お前も気付いてたのか。……あぁ、そうだ。その上で確信した。俺は誰よりも強いとな!」
「フハハ、なるほど。『唯我独尊』と言った所か!」
「正解だ」
その瞬間。風見屋は取り巻き達に合図をした。
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オレは、乱闘が始まり場が混乱しているタイミングを見計らって、蒲原達と共に3階の教室へと逃げた。
そして、そこで風見屋と千羽達の意味ありげな会話を思い出していた。
(この学校の仕組み、か)




