11話・基準
「もう、繃くんに関わらないであげてくれないか?」
藤垣のその発言に、オレは黙って頷いた。
「それは、オレがF組だからか?」
「簡単に言えば……。うん、そうだね」
目を開くと、彼はオレの目に真っ直ぐと視線を向けていた。
「僕はね、A組を皆が協力しあえる程に仲良しなクラスにしたいと思っているんだ」
「それは、とてもいい心がけだな。で、それが何かオレに関係があるのか?」
大体検討はついているが、ここではあえてとぼけて見せた。相手の口から言わせる事によって、『藤垣 大地』という人間がどのような人間なのか探るためだ。
藤垣はオレを睨みながら口を動かす。
「察しはついているだろ? 君によって、繃くんに悪影響が出るのを恐れているんだよ。現に、繃くんは、授業中は教科書すら開かずにおもちゃで遊んでいる。……しかも、彼は何故かA組に友達を作ろうとしない、これは、君が何かしてるからじゃないのか?」
馬鹿馬鹿しい事この上なかった。何を言い出すかと思えば、天鳴の授業態度の悪さをオレのせいだと言ってきた。どうやら、 『藤垣 大地』という人間は、思っていたよりも、程度が低い人間のようだ。
「これがA組のリーダーかよ……」
「今、何と?」
「なんでもねぇよ」
そう言うと、オレは、後ろから聞こえる静止を求める声を無視して、食堂へと向かった。
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オレは食堂に入ると、昨日と同じ場所をとっておいてくれている天鳴を見つけ、そこに向かった。
「遅れてごめんな」
「別にいいけど、何について話していたの?」
「ちょっとした雑談だよ」
「えー?」
そう答えると、天鳴は疑惑の目線を向けてきたが、すぐに話題を別の物に変えると、それも止んだ。
そして、オレ達が昼飯を食べ終わるタイミングで、目的の人物がオレの向かいの席に座った。
「お待ちしておりました。雷先輩」
「そうだろうと思ったよ。琉田」
戸惑っている天鳴を横目に、オレ達は話を始めた。
「雷先輩の言っている事は本当でしたね。まさかクラス単位で退学が行われるとは」
「そうだな。因みに、個人での退学も無いわけでは無いからな」
「でしょうね」
「で、話があるんじゃないのか? まさか、退学の事を聞く為だけにここで話していた訳では無いだろ?」
「流石です」
そう言って、オレは話を続けた。
「この学校で研究されている教育方とは何ですか?」
一瞬だけ、沈黙の間があった。
「それが気になるとはな……。やはり、私の目は間違ってはいなかったようだな」
目の前の男は嬉しそうな顔をした。
しかし、直後に、"だが"、と続けた。
「それは言う事はできない」
「何故ですか? 退学の事は教えたのに?」
「それとこれとは話が違うんだよ」
「はぁ、」
納得していない様子のオレの顔を見て、彼は軽く説明をした。
「この事に自力で気づけるのかどうかを、私は判断基準にしたいと考えている」
「判断、基準?」
そうだ、と深く頷く。
「貴様がこれにもし気づく事ができた時には、私は『琉田 望』を価値ある者と判断して、昨日気になっていた事について詳しく話してやる」
"昨日気になっていた事"とは、『こちら側とは、どの側なのか』についての事だろう。
「言いましたね?」
「ああ、男に二言はない」
それだけ言うと、彼は席を立って、食堂の外へと去って行った。




