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レイジェーク  作者: 氷上雪彦
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永水のレイジェーク

俺、正之(ただの) 清静(きよしず)中三。

春休みが終わり今日から新学期。


…なんて言ってると俺がまるで主人公みたいだな。

まぁ、俺が主人公になった作品はもはや一瞬で単行本も出ずに終わっているだろう。

俺は(ごく)普通の男子中学生で"普通"に誇りを持った男子中学生だから。


だが、そんな俺の平和(普通)を脅かす奴らがいる。

登校中、必ず現れる奴。

後ろの遠くから物凄いスピードで走ってくるのがわかる。

そいつは高く手をあげ、俺にブンブンと手を振っている。


「きーよーしーずー!!」


ドドドドドドドドドドドド


地面が揺れてる。


俺はとにかく知らないフリして走り出す。

これはまぁいつものパターン。

中学に入ってあいつと知り合ってから登校中毎度同じ嫌がらせを受けている。


「来るんじゃねぇ!」


俺は必死に走るがあいつにははっきり言って勝てない。

あいつは俺を見つければどんな遠い場所からでも必ず追いかけ、追いついて来る。


"大盛(おおもり) 千美(せんび)"

それがあいつの名前

皆んなにはよく"チミ"と呼ばれている。

俺と同じ中三。


ドカッ


「ふぅっ!やっと追いついたー!」


「おい!いきなり飛びついて来るんじゃねぇ!」


「だって清静逃げるんだもん〜僕走りすぎて疲れちゃったよぉ〜」


「嘘つくんじゃねぇ!あんな全速力で走っといて息あがってないって人間かよ!」


「だってぇ〜」


「一緒に登校するなら離れて歩いてくれよ?

お前、男なのに女子制服着てて恥ずかしいから」


「ええ!ひどい!清静僕の事そんなふうに思ってたの!?

ふぇ〜ん!」


千美のこの格好について否定するつもりは無い。

言われなきゃ男って分からないし。

似合ってない事も無いから。

ただ、目立つ。

学校中の奴らは千美が男だと知っている。

見た目と性とのギャップが校内で人気を博し有名人となってしまっている。

俺達が通う一皇子(いちおうじ)中学で千美の事を知らない者はほぼいない。

という事は


「お前(千美)と居ると俺の平和(普通)が脅かされる」


「ふぇぇ〜ん!清静冷たぁい!

いつもの事だけどぉ!」


「お前はしつこぉい」


しばらく千美との言い合いが続いた後、俺達を呼ぶ聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「清静!チミちゃんおはよ!」


こいつは"野原(のはら) ポチ(ろう)"

一皇子中学の生徒会長。

頭の犬の耳の様なくせ毛が特徴。


で、ポチ朗のとなりにいるのが

"無路浪(むじなみ) 氏愛(しあい)"。

中二病。


二人とも中三。


ポチ朗は良いとして氏愛と千美の俺を巻き込んだ会話が始まったらめんどくさい。


「清静、久々だな」


氏愛はそう言って、俺の右肩に手を乗せてきた。


「あ…あぁ」


俺はそう返事をし、とっとと学校に向かおうと歩き出したその時、


カランッ


と、音を立てて俺の目の前に、何かが降ってきた。


「え…」


俺は地面に転がったその石の様な何かをじっとみてみた。


「なんだこれ」


俺はそれを屈んで拾おうとし瞬間…

空間が一瞬で別ものに変わった事を感じた。


俺はゆっくりと顔を上げ、正面を見た。


「…」


いつもと変わらない景色だったが、さっきは絶対無かったはずの大きな影が俺を覆っていた。

俺の直ぐ右にその影の実体がある。


俺は右を見る前に呟いた。


「千美…氏愛、ポチ朗……」


分かってはいたが返事は無い。

何故なら人の気配は一つも感じない。


「何の冗談だよ!」


俺はそう叫んで、目を閉じながら右を向いた。


「…うぅ」


そして、俺は恐る恐る目を見開いた。


「……!」


その時俺は絶句した。


人間の顔をしていて、下半身が無く、

400mはある化け物が俺を見下ろしていた。


「お、ぉああ!!!!!」


俺はその場にショルダーバッグを置き、走り出した。


やばいやばいと心の中で何度も叫んだ。


あれは追いかけてくるやつか?

殺される?


後ろなんて振り向いてる暇は無いし確認のしようがない…


「うぁぁ!」


ドサッ


俺は転倒し、直ぐに起き上がろうとした。

すると、目の前にはさっき見つけた石のような何が落ちていた。

俺の手から落ちたのだろう。

さっき拾ってからずっと握りしめていたのも忘れてた。

俺は石を拾い、再び走り出そうとした時だった。


「ョ…マデコドモォォ…」


真後ろから聞こえる化け物の声。


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