第六話 複合錬金術
ロイは、他の生徒と同じような普通の日常を過ごしていた。ただ一点だけを除いて…
それは、学園史上初といってもいいと断言出来るほどの、偉業を成し遂げたから。その偉業とは、ある日サラから『提出されている論文の数が足りなくて困っているの』と、急遽論文の提出をお願いされ、その場でサクッと書き上げた。ロイにとって何気ない感じで提出したものが、偉業となってしまったのだから……
ロイが何気なく提出した論文の内容とは
学園内のダンジョン内で体験した、火の錬金術で出現した道に存在する溶岩を錬成した錬金術の術式を詳しく書き写した論文。
ロイの書いた論文が公表されたことによって、この世界の常識が瞬く間に塗り替わっていった。
論文が発表されてからというもの、ロイに講師となって講義をやってくれないかという依頼や、さまざまな現象についてロイの観点から推測される論文の提出の要請など、一応生徒だよね? サラから自由にしていいって言われてるのに? といった、数々の疑問が浮かぶロイだが、ロイは一切断らず全ての仕事を引き受けこなしていった。
そんな多忙な環境に身を置きながら、仕事をこなしていくうちにロイは、新たな構想を思い描く。
そう、この世界の人々にとって未開の現象【複合錬金術】について……
ロイは仕事が一段落ついて落ちていた頃、今まで頭の中だけで練っていてしかし時間がなく、実践できずに悶々としていた実験にようやく手を付けだした。
手始めに火と水の術式を掛け合わせて、超高温の熱湯やまったく相手の姿を確認することのできない霧を発現させることが可能な術式を完成。
他にも、複数の属性同士をかけ合わせたりなど、予想外な事象や出来事が発生したりと大変危険だった為、ロイが実験を行う通称実験場は、自然と人が寄り付かなくなった。
好奇心よりも自分の命が大切だから… ロイは、自分の命より好奇心の衝動が大きいが…
ロイが複合錬金術についても論文で発表したことにより、今まで2工程で行っていた現象を、1工程で済ます効率化、更に掛け合わせることにより強力となった複合錬金術は、錬金術師の間で密かにホットな話題となる…
これにより、今まで1属性だけと思われ見落とされ続けていた、複数の属性持ちの錬金術師たちにやっと日の目をみせることが出来た。
2属性の複合錬金術を研究していたロイが、3種、4種と徐々に複合させていく属性が増えていった過程は、誰の目からみても大いに予想がついた。
しかし、2属性複合だけなら大抵の人でもなんとか理解出来ていた範囲だったが、3種以上となってくると大抵の人には理解が困難で、その術式も複雑怪奇になっていく……
サラは学長という立場になるほど優秀ではあったが、理解が出来たのは4種の複合錬金術までだった。
ロイが7種の錬金術を複合させて、習得するまでに要した期間はダンジョンを踏破してから3年経過した。
7種の複合錬金術の術式を習得するのに、凡人には一生かかっても理解出来そうにない。
そんな難解で複雑な術式を、短期間で習得したロイの頭脳は常人をやめて化け物の領域に足を踏み入れていると思われる。
そんな奇想天外、複雑怪奇な7種の錬金術によってロイは、この世界ではない別の世界へ転移ができることをついに発見した。唯一の手掛かりだった、本の転移者という文字だけを頼りに……
ロイの好奇心は、慎重や自重という言葉をかなぐり捨てて、異世界に転移していった。
次なる世界へと……
新たに六話書き出しました。
文章が短文になってしまった。あんまり文章が思いつかなくて。。。
もしかしたら変更していくかもです。五話も毎日更新がギリギリだったこともあり、あまり見直せなかったのでもしかしたら修正するかもです。
次話は元々書いた分を加筆修正していくのでネタバレなど気になった方は旧を読んで頂ければ幸いです。
大筋は変更いたしませんので。よろしくお願いいたします。




