表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

一 全ての始まり

 さて、小説家になろうの皆様。はじめまして。suryu-と申します。

 普段は他サイト様で活動しているのですが、今回初めてなろう様で小説を書くことになりました。

 おまけに、挑戦するのは純粋な異世界とかではない歴史系史実系。

 色々な兵法が出てくるかもしれませんが、なんとか解説しなきゃと頑張る所存です。

 質問。感想などはお待ちしております。それでは、ごゆるりとなさってくださいな。

「時にはね。こんな事もあるかもしれない。世界を動かすという、一つの物事が」


「それはどんな運命か。最初は、分からないよね。多分彼も。そして僕も」


「今僕がこうして話している時間は、序章にも満たない。彼を送り出すためのものと、言ってもいい時間だ」


「……さぁ、今の僕の出番はここまでだ。後は彼に託そうじゃないか」


「そう、これは一人の人間の物語。戦いを生き抜く男の、ね」



■■■




 普通とは。それこそ、世界にありふれたものである。誰もがその普通である事を疑わずに、意図的に普通でないものを排除する。

 勿論、それは悪いこととは言わない。人間は、得体の知れないものを見つけてしまった途端に、嫌な思いをすることは多いのだ。だからこそ、そうでないものを見た途端に拒絶してしまうのかもしれない。


「で、これはどういう事だ?」


 存外、自分はその例に当てはまらないものだな、と。朝目覚めたら、いきなり自分の知らない場所に居た青年は、自分の状況下に溜め息を吐く。


「そもそも、自分は普通に寝ていたはずだ。何もおかしな事はしていない。竹中優希二十歳。身長は178cmで、顔はそこそこ……だと思いたい。髪は黒で、瞳も色素が薄い茶色の普通の日本人。そう。あくまでも普通の。……だと思いたいけど」


 そんな自身の確認をしながらも見渡すが、あるのは野原でしかない。近くに森はあるが、それしか物が無い。


「……分からない。どうしようか。歩き回るのは、得策じゃないが」


 自分が今、出来ることはなんだろうか。と頭脳を働かせていると遠くから音が聞こえる。ドドッドドッと、何かが進んでくる音だ。さらには馬らしき動物の嘶きだ。

 その音は、青年こと優希の元に向かってくる。はぁ。と溜め息を吐きたくなったのを、彼は抑えた。


「……馬、か。一体どうなってるんだ? 鬼が出るか、蛇がでるか」


 そして、走ってきた馬は彼の目の前で止まる。さて、誰が乗っているのやら。そう思い見上げた先にいるのは、見事な美女だった。

 一言にて美女と述べたが、深い緑と黒の混ざった長い髪の毛をたなびかせ、顔はつり目の整ったもの。身長は171cm程だろうか。胸が大きく腹はしまり、なかなかに良いスタイルであることが伺えた。服装は何処か中華を思わせるものだが、どことなく自分のものと、近しい部分も見える不思議なデザインで、大きな胸が主張されている。むしろ、現代の洋服に近いのではないか。

 そんな彼女は、宝物を見るかのように、ゆっくりと手を指し伸ばした。


「漸く見つけた。我等が救世主を……!」


「……はい?」


「乗ってくれ! 今から連れていきたい場所がある!」


「ち、ちょっと待って、ゔぇっ!?」


 美女は優希を引っ張って、馬にいきなり乗せれば、問もせずに走り出す。何が何だか分からないが、今は馬に揺られることになった。

 優希は、生まれて初めてという訳では無いのだが、久しぶりに乗った馬は速い速い。酔う訳では無いが、こんな速度は出せたかと僅かな疑念を抱く。

 そこで、よく観察すれば馬の色は赤い。赤い馬なんて赤兎馬しか知らないな。と半ば現実逃避しながらも、周りの観察を続ける。

 気づけば、街中に入っていることに気づく。だが、その作りは自分の知る現代のものでなく、古めかしさが立っていた。

 自分は、この光景を見た事ある。ふと、彼はそう思ったと同時にある予感が巡る。


「……まさか、三国志演義か?」


 そういえば。と目の前の女性が持っている、得物らしきものを見てはすぐに理解した。それは青龍偃月刀と呼ばれる、三国志演義の中でとある武将が用いた物で、現代では有名な武器の一つとなっている。

 予感は外れそうにないな。そんな心境を呟きながらも、開いた城門の中に飛び込む、自分を乗せた馬は、足が速いな。と、半ばから全力へと変わる、現実逃避を試みた。



■■■



「孔明様! 関羽将軍が、帰還なさりました! 例のお告げの人を、連れてきたようです!」


「分かりました。すぐ向かいます!」


 城の中は、一段と慌ただしくなる。私、諸葛亮孔明は今城の中を駆けていた。今日は、国中が警戒をしていた日。そう、私達を救う青年が現れるという、左慈という人のお告げにより、奔走していたのだから。

 こうしていざ見つかると、私の努力は無駄ではなかったと思う。誰もが、欲しがる人物なのだ。その青年は、どのような人物なのか。私はとても気になっている。


「関羽さんはなんと言っていますか?」


「物腰落ち着いた青年だと。服装の違いから恐らく異国の者ですが、慣れない状況にある筈なのに、落ち着いた表情をしているそうです」


「なるほど。参考になります」


 今の情報で、少しばかりは分かった事がある。落ち着いた雰囲気を保てるという事は、どこか達観している部分があるということ。

 そして。これから何があるか分かっていて、ある程度気構えが出来ているのではないか。その二つだ。

 その青年が、居るという部屋の目の前に、私は立つ。そこに居る人物を見定めるため、部屋の戸を叩き入る。


「初めまして。貴方が、関羽さんの見つけた青年ですね?」


 第一印象は、慌てない人。おそらく西洋の服を身にまとい、顔も良く、優しい雰囲気を持つ黒髪の青年で、こうして私を見ても落ち着いている。

 そう思って私は自己紹介しようと口を開こうとした時、彼は一言。


「……幼女?」


 そう、私を見た途端に発した言葉はこの一言。この私が、気にするものの一つ。


「悪かったですね、幼女で!」


「あ、いえ。ごめんなさい」


 すぐさま謝った彼は、私を見ながら頭を下げる。私とそんなに年齢は変わらなそうな顔立ちだったけど、それはともかくとして。

 この状況にありながら、冷静な彼はまさしくその器にあると思う。彼ならもしや。と私は信じることに決めた。


「貴方が沙慈の告げた、私達を助けてくれる軍師さんですか?」


「……はい?」


 けれども、私の言葉に彼は首をかしげ、どういう事だと言うふうに考え込む。だが、私がさらに問いかける前に、彼は溜息を吐いた。


「軍師と聞きましたが、私は竹中の子。出来なくはありません。ですが、朝起きれば見知らぬ土地に居たために、この場を何処か知りません。故に教えていただけますか?」


 思わず、目を見開く。気怠い雰囲気を出してはいるが、彼はまさしく軍師の風格を持っている。少なからず、私にはそうみえた。

 普通なら、どこからどう見てもただの青年。竹中という言葉には聞き覚えはないが冷静な様子に賭ける事にした。


「私は、諸葛亮孔明。三国にて、その一つ。蜀に所属する軍師です。そして、此処は荊州。三国の中心都市です」



■■■



「なるほど」


 その一言を呟いた自分は、これは夢だと思いたいという感覚にかられるのだが、今目に見える光景は現実そのもの。味覚もあるし、嗅覚もある。何より、夢とは違う質感もある。

 目の前の少女は諸葛亮孔明と名乗ったことには驚いた。俺は本当に、寝ている間に摩訶不思議なところに来たらしい。

 竹中の子。そう述べたは良いが、策略は書物で読みふけった程度。実際の、現実での軍師の経験はない。正確に言えば、対戦型戦乱系のVRMMOの軍師で異名があった程度だ。

 だが、それでも受け入れるしかない。幸いにも自分は混乱していない。恐らく、歴史上の時代。あるいは、それに近いものに飛ばされたのだとは分かるのだが、異常な程に、落ち着いている自分の考えなら、なんとでもなる。そう信じて、目の前に居る孔明の顔を見る。

 恐らく、自分に対して何らかの賭けをしたのだ。そんな感想を抱きながらも、竹中という言葉を心に刻む。自分の家系に連なる苗字なのだ。

 というのも、竹中重治。つまり竹中半兵衛という、日本の戦国の歴史において、重要な人物の子孫であるからという事実があり、その誇りを胸に、自分は顔を上げた。

 ここまで来てしまったのなら、なるようになるしかない。


「地図を見せてください。敵の進んでくる地形が見たい」


「……分かりました」


 孔明。白髪とも銀髪ともとれる髪の色と、所々跳ねている癖毛の、愛らしい姿の彼女が手をあげれば、兵士が地図を持ってくる。その間僅か数分。どうやら、本当に最初から用意されていたらしい。

 そして、今度はその地図の上に凸型の駒が置かれる。赤と青。つまり自軍と敵軍。その配置は、かなり北部に位置していた。

 ふむ。と自分は一声漏らした後に、少しばかりの沈黙。考察を始める。


「……」


 孔明も、自分の考察の末を待っているのか、じっと黙している。気を遣わせてしまっているなとは思うのだが、ふと、そこで一つの道が気になった。

 それは、まさに兵法の基礎の基礎。余りにも容易な答えだが、これならばやれる。そう信じ、彼女へと向き直った。


「この山道。ここを通るように、左右から挟み敵を追い込む。……丁度、右手に林。左手に山という形になるだろう」


「っ!?」


 孔明の瞳は、揺れる。自分の答えに、何か思う所が有るのだろう。だが、それでも。ここで言葉を止めてはならない。


「この山の上から燃えた藁の束を落とし、林に火をつけた後に岩石等でさらに追い詰める。逃げようとする敵は、山道の両方向から攻めれば良いかと」


「……なる、ほど。……本当に実力は確かなようです」


 一瞬の驚きを見せた後に、凛々しい顔へと色を変えた彼女には、ちょっとした安堵を覚えたのと、同時にこれは基礎だ。と謙遜する。

 ただ、確実に言えることは、彼女の自分を見る目は変わった。という事だろう。



 後に、自分は知る事になる。大きな戦いは、ここから始まるという事を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ