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プロローグ1

ショートストーリー。

「ふはははははー!所詮、死霊に過ぎん!我等が光の力の前には塵芥も同然だ!!」


 咆える男の名はアドマルト・ガードレル。

 聖光教会に属する聖騎士の一人である。

 彼は今、前方に対峙しているそれらを睥睨していた。


「魔法隊、浄化結界『エクスクリア』を発動せよ!!」

「はっ!」


 アドマルトの命令を受けて、魔法部隊と呼ばれた者たちが、魔法を行使するために各々の魔力を言葉と共に練り上げていく。それぞれの体を覆うように淡い光が灯り、それはやがて大きな一つの光となる。


「『エクスクリア』」


 その唱和が合図となり、光は全方位に広がり半球状の光の空間を作り出した。


「くくく…これでそいつらは消え………ない!?」


 目の前に広がる死霊の群れ。

 骨と武器だけの骸骨の群れ。

 それらは、光の空間で何事もないように佇んでいた。


「馬鹿な…なぜ!?」


「えっ?その程度の光で消えるわけないじゃん。その辺を漂う幽霊ならそれくらいのエネルギーで拡散されて見えなくなるけど…そいつらは、マジでそこにいるんだぞ。聖なる光だかなんだか知らないけど、それで終わりならもう、いいよな?…突撃~」


 死霊と骸骨の群れの後方に立っていた少年は、心底呆れたようにそう言った。

 そして、それらは淡い光の中を悠然と前進していく。


「くっ、重騎士隊、前進だ!!」


 迫る死霊の群れに、アドマルトは鎧で覆われた騎士の部隊を当てて食い止めようとする。

 相手が普通の兵士だったなら、それは定石とも言える戦術かもしれないが…


「!?」


 体が半透明の人型の何かは、悠々とそれを通り過ぎていく。


「ど、どうなっている!?」


 アドマルトの驚きを他所に、重騎士達は目の前に迫る骸骨の群れに飲み込まれていく。

 骨と武器だけのはずなのに、その膂力は並みの騎士よりも強く、全力でそれらと向き合わねばならない。彼らは突然訪れた死を予感させるおぞましい状況に、混乱していた。


「魔法隊!怯まず向かい撃て!!」


 アドマルトの怒声に、魔法隊は次々と光魔法で重騎士を素通りしてきた死霊を狙うが…


「あれ~?ご自慢の魔法隊がどれほどのものかと思っていたのになぁ…」


 少年の台詞は、落胆したそれだった。


 魔法隊から放たれる光の魔法は光の線が数メートル進むというものだったが、死霊に当たっても特に何も起こさずに消えていくのだ。そして当たった死霊達はといえば、訝しげにわざわざ立ち止まって首を傾げる始末。言葉を発っせたならば「えっ、なんかしたの?」という感じである。


「なぁ、レイタ。あたしらもそろそろ行っていいだろ?あれじゃ、すぐに終わっちまうよ」


 レイタと呼ばれた少年の隣にいた全身甲冑が、視界に広がる微妙な光景に呆れてそう言った。


「うーん、そうだなぁ。じゃあ、適当にやっちゃっていいや。あれ以上はなさそうだしね」

「よっし、そんじゃ頼むぜ」


 その言葉と同時に、全身甲冑の首から上だけが浮かび上がり、そのまま、すーっとレイタの前に移動した。全身鎧と冑に分離したその姿は、一般人が見たら絶叫するか、驚愕のあまり活動停止するかであろう。


「ソルダ、程ほどにな。…具象現出アピアレイス


 レイタが眼前の冑に声をかけると、その空間が一瞬蜃気楼のように揺れて、一人の姿を現す。

 それはレイタよりも背の高い、女性の特徴を良く現した肉体であった。


「ふぅ…さぁて、暴れてくるとしよう」


 裸に冑を被るだけという変態的な姿をさらす彼女は、徐に冑を外す。

 そこには、ぎらぎらとした熱のある視線を放つ翠緑の瞳を持つ、凛々しい顔があった。


「先に装備してからな…」


 レイタは目の前にある豊満な双丘を観ながら呟いた。


「おおっと忘れてた。首だけの生活に慣れちまうと、体がおざなりになるんだよな」

「ほれ、こいつを使え」


 レイタが地面に手をかざすと、それは地面から生えるように現れた。

 胸当てや鎖で編まれた防具、鉈と刺突に特化した剣のような武器が。

 ソルダはすぐにそれらを慣れた手付きで身に着けると、気合と共に戦場へと駆けていった。


「ふふふ…愚かな教会の人間共め…わらわの範囲魔法で一網打尽にしてくれようぞ」


 その姿を見送りながら、レイタの斜め後ろにいた少女が不敵な笑みを浮かべていた。


「あ、マリシャはダメ。骸骨部隊を巻き込むから。単体魔法ならいいけど」

「なっ、なんでじゃ!?ちゃ、ちゃんと狙うぞ?敵だけ吹き飛ばすのじゃ?」


 不敵な笑みはすぐに崩れ去り、困惑に塗れた表情になった。


「…まだできない事を、自信無く首を傾げながら力強く言うのはどの口かな?」

「ふぁっふぁふふょふぁ(ま、まつのじゃ)」


 レイタに口をぐにっと摘ままれたマリシャと呼ばれた少女は、両手を前に出してあわあわと振るが、


「メイコさん、子守お願いね」


 レイタは意にも介さずに、後ろに控えていた女性に声をかけるのだった。


「かしこまりましたぁ~。マリシャちゃん、いい子で待ちましょうね~」

「ふょっふぉんふぁぁぁ(そ、そんなぁぁ)」


 マリシャは、メイド服を身に纏うほんわか艶やかなメイコに脇の下から持ち上げられると、そのまま後方に運ばれていった。


「シドはどうする?……そうか」


 レイタの隣に残っていた首無し鎧は、レイタに対して片膝をつき、臣下の礼を取った。

 その姿はまるで、王に忠実に従う騎士を彷彿させた。


「ま、ここまで攻め込んでこれる奴はいないだろうけどなぁ…」


 レイタの視線の先には、空を舞う鎧が映っていた。

 ソルダに蹴り上げられた重騎士の末路である。

 そして、その奥では死霊の攻撃を受けた魔法隊と一般兵らしき者達が阿鼻叫喚となっている。

 最早、この戦場の勝敗は目に見えて解ってしまうだろう。


「お、また飛んだ」


 開戦からおよそ10分足らず。

 聖騎士が率いる総勢百名の軍隊は、壊滅した。


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