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ヒトリゴト

転生願望者

作者: 一利

 死にたいとは違うんだ。ぜんぜんまったく違うんだ。ただ遠くに行きたいだけなんだ。みんないない、どこか遠くへ。この町じゃないどこか遠くへ行きたいんだ。ここじゃなかったらいいんだ。みんなに見られなければそれでいいんだ。

 そんなことしても自分は変わらないのにね。人は変われない。環境を変えても変わらない。もともとの自分がいる。知らない場所にいってもそいつはいるんだ。立場があやふやなときはそいつを頼りたいんだ。だから私は私。昔の私をここでも引き継いで、使ってしまっているんだ。


 もともとの自分ってのは自分じゃどうしようもない存在。それは誰かの期待だったり、イメージだったり。知らないところで作られて、知らないうちに押し付けられているんだ。そして私はそれを知らないうちに受け入れているんだ。もともとの自分は殺せないんだ。だから私は遠くへ行きたい。もともとの自分が追ってこないぐらい遠くへ。私しかそれを知らない場所で、新しい私を作りたいんだ。

 そんなことできるほど器用でもないのにね。自然体なんて言葉もあるからね。私の自然体は変われない。

 人は変われない。性格は変えられる。信念も変えられる。名前だって、性別だって変えられる。だけど、変われないのだ。私には私が永遠について回るのだ。私が記憶でもなくさない限りにね。別の誰かにならない限り。今の私を殺すか失くすかしないと、私は変われない。


 だから生まれ変わりなんて最高だね。私じゃない誰かに変われているんだもん。前の私とは違う。もともとの自分を与えられるんだ。憧れちゃうな。生まれ変わり。人なんて死なないと変われないんだから。可愛い可愛い自分を持ったまま、新しい自分になれて、やり直せるなんて素敵だな。

 ここまでいろいろ言ったけど、変われないなんて所詮は自己愛の裏返し。結局自分のことが可愛くて、可哀そうで、愛おしくたまらないんだ。だから失くしたくないんだ。私はそういう弱いくせに、一人前に生きてるつもりの人間なんだ。

 だから夢ぐらい見させてください。


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