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【詩集】拙くも進もうとする試み

春の言葉

作者: につき

やわらかい夕陽がさしている。

緑はあわく、花はおぼろ。

美味しそうなサラダのようで、

思わず立ち止まると、

風向きが変わったのか、

甘く爽やかな香りが

届いてきた。

振り返れば、

夢のように垂れている

藤の花の香り。


鳥が鳴いている。

その鳥の名を知らない。

もしかしたら知っているのかも知れない。

この薄くぼけたオレンジの斜光は、

夕暮れを美しく染めている。

つまらなかった一日の終わりに、

こんなにもあわい美が広がっている。

やがてくる夜も薫るのだろうし、

朝もまた漂うように始まるだろう。

しかし、またニンゲンの一日が始まる。

生々しく俗な日々のひとつ。

それでも、

またこんな夕暮れは待っていて、

夜は満ちていく香りを湛えている。

もうすっかり目覚めてしまった春は

ここにいて、黙って微笑んでいる。


どうしてだか、春の言葉を誰も知らない。

それでも春を歌い、浸っているのは、

きっともしかしたらわたしたちが、

春の一部をこころに持っているから。

そのぼんやりした光は、しずかな雨は、

なにかを育てて、引き継いでいく。


 *

 仕事の帰り道、夕陽が差していました。美しく新緑と花がありました。天気も良かったので、あたりは春の陽気にどこか浮かれるようでした。その様子が、詩になりそうだと思いました。

 春の言葉とは、春へと直接に語り掛けることの出来る言葉のことです。季節という形のないものに語ることはできません。そこから語り掛けを聞くことは出来ますが、それは一方通行です。どうしてだか、春の言葉を誰も知らない。とは、このことです。その鳥の名を知らない。/もしかしたら、知っているのかも知れない。とは、春の言葉を知らない。でも、聞いたことはある。そして、自分の一部にその感触がある。と、いうことです。

お読み頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] につきさん、はじめまして。 すごく良い詩ですね。 先に「続」を読んでから読みました。 一瞬「サラダ…!?」と思ったんですが、 確かに、春のやわらかい葉っぱや淡い色の花は サラダにして食べ…
[良い点] 一日の終わりに、それがどんなにつまらない一日だったとしても、淡い夕暮れが待っていてくれるという考え方が、とても素敵だと思いました。
2015/04/26 23:36 退会済み
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