慣れてきた頃に
キキュリテアンダと夏樹が同居を始めて2ヶ月が経った。
夏樹はスパメトールの暮らしに慣れてきだしていた。
幼なじみに会う機会が無いのが残念だがトゥイティリアンやセテセンバニャーニと新しい友人も出来たので楽しんでいる。
キキュリテアンダに幼なじみの事を訪ねれば
「リシュが言うには神殿長に鍛えれてるらしいわ。」
と言われ夏樹は巫女とは大変なモノだと改めて思い洗濯をしに行った。
1人で街を散歩するのも最近の夏樹のお気に入りだ。
赤茶色の石畳の道に石造りの家が連なる街並み。
何処かレトロでファンタジーな感じがする。
そろそろ自分も家事以外に学生らしく勉強するか働くかをしなければと考えながら裏道を探索していた。
いくら平和な国に感じたからと言って考え事をしながら探索をするべきではなかった。
後悔しても遅いが、考え事しながら探索してはならないと夏樹は思った。
目の前に現れたのは全身真っ黒の得体の知れないモノで多分、人。
いきなり攻撃をしてきた。
どうやら魔術らしく腕輪が白い光を放って防ぐ。
「うわっ。」
攻撃は防げたが衝撃は防げず夏樹は尻餅をついた。
相手は両刃のある短めの剣を取りだし夏樹に襲いかかる。
寸分の所で避けたが頬に赤い線が入る。
「いって。」
夏樹はとりあえず無我夢中で走り出した。
裏道から大通りに行かねばと必死だ。
残念ながら相手は追いかけてくるので余計に必死に逃げるしかない。
角を曲がると人にぶつかってしまった。
「すいませ…トゥティ!セセン!」
ぶつかったのはトゥイティリアンとセテセンバニャーニだった。
2人は驚いていたが夏樹の後ろにいる相手を見ると
「どこの国のおバカかなー?」
「馬鹿に馬鹿と言われて可哀想です。」
「トゥティ、ひっどーい!」
トゥイティリアンとセテセンバニャーニが漫才を始めそうな雰囲気に夏樹は冷や汗をかいたが戦闘体制を取る2人に安心した。
「ナツキさんはボクの後ろにいて下さい。セセン、お願いします。」
「はいはーい。」
夏樹がトゥイティリアンの後ろに行くと透明な膜に覆われる。
セテセンバニャーニは炎の魔術を放ち始めた。
が何故か相手だけではなく、此方にも飛んでくる。
「えっ?」
「セセン!ちゃんとコントロールして下さい。」
驚く夏樹を他所に膜の中にいるトゥイティリアンは膜に当たった炎を加速させ相手に飛ばしていた。
「ごめーん!トゥティ頼りにしてるー!」
そう言いながらもセテセンバニャーニのコントロール力は低いようでトゥイティリアンが対象していた。
全身真っ黒の得体の知れないモノはセテセンバニャーニの炎で燃え消えた。
「あれは…?」
事が終わり夏樹が聞けばトゥイティリアンが答えた。
「あれは魔術士が使う分身みたいなモノです。個々により使用方法や精度が異なりますので何とも言えませんが…大丈夫です。師匠とボクで懲らしめておきますから。」
説明と共に晴れやかな笑顔をしたトゥイティリアンを見てセテセンバニャーニが震えていた。
「では師匠に報告にでも行きましょう。」
トゥイティリアンの言葉に夏樹は暗くなった。
キキュリテアンダに迷惑をかけてしまうのは格好悪いなぁと思う夏樹であった。