世話好き
元の世界に返して欲しいと訴えたが喚ぶのは出来ても還すのは前例が無いと言われた。
キキュリテアンダは一生涯をかけ解明すると誓った。
まぁ前例が無い魔術の研究に興味を持ったとも言うが…。
そんなキキュリテアンダと暮らして早2週間。
夏樹はキキュリテアンダの生活が物凄く不規則かつ不摂生で心配になった。
良い大人だから、とやかく言うべきではないだろうと思っていたが尋常じゃないので勝手にお世話をする事に決めた。
キキュリテアンダに魔術を防御する腕輪が完成したので、夏樹は漸く王都なら外出して良いと言われた。
出来はまだ気に食わないらしいが最低限の基準には達したらしい。
早速キキュリテアンダの用で訪ねていた魔術省の彼女の弟子トゥイティリアン・キャルルークとセテセンバニャーニ・ハッフェンブルグに話したら踊りかねんばかりに喜び出した。
「わーい!ししょーってば行ったら怒るんだもん!それから解放される!」
手放しに喜んでいるセテセンバニャーニは濃い鬼灯色の髪をくくり左側にたらしており、つり目気味の翠の瞳をしている22歳の女性だ。
「セセンは師匠の所で騒ぐからでしょう?ナツキさん、ありがとうございます!これでボクの苦労が1つ減ります!」
トゥイティリアンはふわっとした蒼髪を左側に上の方を少し結んでいて薔薇色の猫目の17歳の少年だ。
身長はキキュリテアンダより少し高いがセテセンバニャーニよりは僅かに低い、本人曰くまだまだ伸び盛りとの事。
「師匠は魔術以外は本当に面倒なお方なので何かと大変かと思いますが宜しくお願いします。」
「リテアさんにはお世話になってるし役に立てるなら嬉しいよ。」
「ナツキー、ししょーに魔術省に来てって伝えて!そろそろ上のじじぃがうっさいの。」
「わかったよ、セセン。じゃあね、トゥティ。」
トゥイティリアンとセテセンバニャーニと別れて夏樹はキキュリテアンダの屋敷に帰る。
実は魔術省とキキュリテアンダの屋敷は徒歩10分くらいなのだが、その距離の移動すら億劫だと彼女は言う。
「リテアさーん、帰りました…ってどうしたんですか!?」
帰宅してみればキキュリテアンダが廊下で倒れていた。
「あー…眠い気がしたけど魔術研究したくて…眠ろうと思ったけど移動するの面倒ぉ…」
もう寝惚けながらの説明は支離滅裂だと何となく幼く見えてしまう。
仕方ないと夏樹は思いながら
「ベッドに移動させますよ。」
と言いキキュリテアンダを抱き上げて移動させる。
起きていればキキュリテアンダは断固拒否したかもしれないが眠いので、そこまで頭が回らないようだ。
「あったかーい…ありがと…」
普段にはしないふにゃふにゃとした表情で言われ可愛いと夏樹は思ってしまった。
キキュリテアンダをベッドへ移動させ終え夏樹は自分の芽生えそうな感情に少々厄介だと考えるのであった。