自分だけ
玄関先の出来事から数日。
夏樹は魔術省でセテセンバニャーニから常に満面の笑みで迎えられる。
トゥイティリアンはセテセンバニャーニ程は顔には出さないがキキュリテアンダが幸せそうなのが嬉しい雰囲気を醸している。
そんな渦中のキキュリテアンダは相変わらず魔術研究に精を出している。
「ナツキはししょーといつ結婚すんの?」
午後の穏やかなお茶の時間に唐突な発言をして周囲を驚かせるのは最早セテセンバニャーニの十八番だと夏樹ですら思うようになった。
夏樹は隣にいるキキュリテアンダと正面にいるトゥイティリアンを見る。
流石に2人が動揺するわけもなく平然と答えた。
「師匠とナツキさんの考えがありますから不躾に聞いてはいけません。」
「えー…楽しみなのにー。」
きっぱりとトゥイティリアンに言われればセテセンバニャーニは不満そうな声を上げる。
「式は挙げないわ。面倒だもの。」
静かに紅茶を飲んでいたキキュリテアンダが言う。
「なんでー?ししょーの花嫁姿見たいし!祝福光音したい!」
「らびーさどぅん?」
「知らない?光がぱぁーってなってキレーでカランカランって音がするの!」
セテセンバニャーニの抽象的な説明に困惑する夏樹にトゥイティリアンが細かく教えてくれた。
スパメトールの結婚式の最後に親しい人達からお祝いの魔術としてする祝福光音。
この魔術は幻想的な光りと綺麗な音で見ても聞いても幸せな気持ちになれるのだ。
残念そうに項垂れているセテセンバニャーニを見てトゥイティリアンが頭を撫でながら慰めている。
キキュリテアンダも一応乙女だ。
結婚式や花嫁に憧れないわけではないが、なんせキキュリテアンダは極度の面倒くさがりという理由が大半を占める。
夏樹の事を考えると問題が山積みなので挙げない。
夏樹はモテる。
王家に多い金髪碧眼の格好良い青年だ。
老若問わず女性が見とれている姿を見る事も少なくない。
見目だけではなく中身も素晴らしい人物なのはキキュリテアンダだけが知っていたいとさえ思っている。
まぁ、それも元来の面倒見の良さで公になっているので意味がない。
結婚式を挙げたくない本当の理由としてはこれ以上格好良い夏樹を他人に見られたくないキキュリテアンダのちょっとした独占欲だった。




