手詰まり
夏樹とキキュリテアンダが同居し始めて1年が経った。
キキュリテアンダは研究室に籠りながら唸っていた。
一生涯かけて解明すると言った魔術、夏樹と巫女を元の世界に帰すとのだが誠に遺憾ながら手詰まりだった。
喚ぶ事が出来るなら帰す事も簡単だろうと考えていたキキュリテアンダは自分を呪いたくなる。
勿論、色々な可能性を考えて解明を続ける事は辞めない。
世界は1つではなく、数多の平行世界や異次元世界と重なりあっていたり独立していたりと複雑だ。
本来なら召喚術も異質な術で世界の理を曲げているだろうと予測されている。
頻発して行う術ではないし、易々と出来る術でもなかった。
キキュリテアンダは深い溜め息をついた。
夏樹に顔向け出来ないのが余計にキキュリテアンダの胸を締め付ける。
「師匠失礼します。」
部屋のノックと共に扉が開けられるとトゥイティリアンとセテセンバニャーニが入ってきた。
「前回調べる様にと承った内容をまとめた資料です。ご確認願います。」
トゥイティリアンに渡された資料をパラパラと一通り捲り、キキュリテアンダはまた溜め息を1つ。
トゥイティリアンとセテセンバニャーニは資料にキキュリテアンダが求めた内容が皆無だったのだと理解した。
「仕事の合間に御苦労様。」
力なく笑うキキュリテアンダにトゥイティリアンは苦笑いを返す。
「ししょーは何にあせってんの?」
こんな雰囲気の中で不思議な発言をするセテセンバニャーニはある意味流石である。
キキュリテアンダもトゥイティリアンもきょとんとした顔をしている。
「セセンには私が焦ってる様に見えるぅ?」
「うん。ナツキが巫女と一緒に魔術省来た時から。ずぅーっとだよ。」
セテセンバニャーニに言われキキュリテアンダはあの日の事を思い出す。
あの日は夏樹が迎えに来てくれると言うので少し浮かれていた。
たまたま窓の外に目を向けたら夏樹が歩いて来るのが見える、隣に並んで歩いている巫女と笑いあいながら。
旧知の仲とは聞いていたが、あんな夏樹の気軽な雰囲気を見た事がなかったキキュリテアンダは胸中が暗くなった。
思わず外に飛び出して行けば優しい笑顔で夏樹に迎えられるが、まじまじと巫女を見るとざわつく心を抑えきれない。
そして、あの日の翌日より根をつめて解明を急ぐようになったのだ。
一人言の様にあの日をポツリポツリと振り返るキキュリテアンダを見てトゥイティリアンは途中から何かに気付き生暖かい目で見守っている。
そんなトゥイティリアンを見てセテセンバニャーニは悪人面をしていると思ったが前回の失敗もあるので黙っていた。
「私どうしたのかしらぁ?」
キキュリテアンダは出口の無い迷路にいるような表情だった。
あまりにも困ってる様子に見えたのでトゥイティリアンは口を開く。
「つまり師匠は多分嫉妬してらっしゃったのではないでしょうか?」
セテセンバニャーニはトゥイティリアンの発言で慌てだしたがキキュリテアンダは憑き物が落ちたような気分になった。
さすれば今までの不可解な気持ちに整理がつく。
「トゥティありがとう。」
満足そうに微笑むキキュリテアンダを見てトゥイティリアンもにっこりと笑いセテセンバニャーニを連れて研究室を出て行った。
キキュリテアンダは自分の恋心を自覚した。
帰り道のトゥイティリアンとセテセンバニャーニ。
「ねぇ、トゥティ。嫉妬ってししょーは巫女になりたかったの?」
セセンの突拍子もない発言にボクはぎょっとした。
「違います。お子様なセセンにはわからないでしょう。」
「いやいやいやいや。あたし、トゥティより大人だからね。」
ボクの発言にセセンは高速で否定する。
隣で必死にボクよりも大人発言をするセセンはやはりお子様のようだ。
あんなにもわかりやすい師匠を見て気付かないのだからボクの気持ちになんて到底わかりっこないのだろうな。
あ、そう思ったら何か頭痛がする。




