面倒な出来事
金緑の国スパメトールは100年ぶりに異世界より巫女を喚ぶ事を余儀無くされた。
祈りを捧げる力が弱まり加護が受けれなくなりつつあった。
それを打開するのは異世界より選ばれた巫女が祈る事。
今回、異世界の巫女を召喚する為に選ばれた魔術士キキュリテアンダ・アロバート。
深い夜色の長い髪に漆黒の瞳、齢27にして魔術に対して右に出る者はほぼいないとされる秀才の魔術士だ。
そんな彼女の欠点を述べるなら、かなりの面倒くさがりで魔術にしか興味の無い事だろう。
結論から言えばキキュリテアンダは何名かでやらないと成功しない召喚術を1人で成功させた。
また1つ功績をあげた事になるが予想外な事が起きた。
巫女の幼なじみの河口夏樹も一緒に喚んでしまった。
青年・夏樹は普通の人だが1つ問題があった。
容姿は高身長で爽やかで整った顔をし少しハネてる金髪に碧の瞳。
そう髪色と瞳の色に問題があった。
金色の髪と碧の瞳は王族に多い。
この国では珍しいので何か事件に巻き込まれるのも少なくはない。
王リシュリュート・エンゼティヴは困り夏樹の世話をキキュリテアンダにするよう命じた。
元を正せば巫女と一緒に喚んでしまったのはキキュリテアンダだ。
それに彼女は秀才の魔術士でリシュリュートとは従姉弟。
これほど適任した者が他にいるだろうか。
「リシュめ…私に面倒を押し付けて…」
キキュリテアンダはぼやく。
夏樹にはそれが聞こえていたようで苦笑している。
「とりあえず屋敷に帰ろぉ…」
キキュリテアンダが夏樹の側に行きパチンと音がすると一気に景色が変わる。
「今日から此処で暮らして。何かしたい事があったら私まで言って~?とりあえず私はあなたを護る為の強力な道具の開発に取りかかるから…聞いてるぅ?」
「あ、はい。」
「反応が無いから先人の魔術疑っちゃったじゃない。」
キキュリテアンダは夏樹と巫女に互いに互いの言語がわかるように術を施した。
勿論、召喚なんてそうそう行われるモノではないので疑っており予め自分にかけ実験したくらいだ。
「すいません。えーと…ききゅ…」
夏樹が謝りながら少し困った様な顔をした。
どうやら異界人からはこの世界の名前はややこしいらしい。
先程も巫女はリシュリュートの名前を呼ぶのに若干苦労していたようにキキュリテアンダは見えた。
「キキュリテアンダ・アロバート。リテアで良いわ。」
「宜しくお願いします。リテアさん!」
綺麗かつ愛らしく笑う夏樹にときめいたのをキキュリテアンダは気付いていない。
こうして秀才の魔術士だが、それ以外に興味がないキキュリテアンダと巻き込まれた異界人の夏樹の同居生活が始まった。