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準備

気づけばもう警察署の近くだ。


いつもの契約している月極駐車場に車を停め、警察署の入り口へ向かう。


古臭いベージュ色の外観に旭日章、窓には鉄格子が付き、


入り口には『特殊詐欺防止!!』と流れる電光掲示板が見えてくる。


ここが彼の所属する北海道警察札幌北星警察署だ。


玄関から入り、当直窓口にいる生活安全課の後輩に挨拶をして交通課の部屋に入る。


中は古い机と椅子が並び、エアコンは無く扇風機が数台あるだけ。


全員の机にパソコンがあることを除けば昭和の刑事ドラマに出てくるような部屋だ。


バッグを自分のデスクに置き、4階のロッカールームに向かう。もちろんエレベーターは無しだ。


2階に上がったところで、地域課の後輩が数人で話をしているのが目に入った。


「なんかあったの?」


恵一は、一番仲がいい後輩の『古川』に話しかけた。


「北星西交番の坂上が咬傷事案になったんすよ」


坂上は最近警察学校を卒業してきた新人だ。


古川の話によると不審者通報を受けて現場に臨場した坂上とその上司は、歩道で寝転ぶ男を発見。


酔っぱらいの類だと判断した二人は、保護するためパトカーに乗せようとしたところ急に暴れだし、坂上の腕に噛みついたのだそうだ。


応援要請を受けて駆けつけた古川と警官数人で何とか取り押さえ精神錯乱で保護し病院にぶち込んだのだ。


「だから入り口にパト(パトカー)が3台もいたのか」


恵一は入り口にパトカーが何台か停まっていた理由がわかった。


「自ら隊やら機捜まで応援に来てくれて、4人じゃ多分抑えきれなかったすわ」


「坂上は?大丈夫なの?」


「病院で治療受けてるらしいけど一応元気らしいすよ」


なんかこの展開は、ゾンビ映画の冒頭見たいだな。恵一はそう思い


「坂上、ゾンビになったりして」


そんな冗談を言いながら階段を登ってロッカールームへ向かった。


ロッカーに掛けた制服に袖を通す。


みんなが見慣れた水色の夏制服。


長袖を腕まくりするのがポイントだ。


交通課の印である白色の帯革をつけ、白い警笛吊り紐をつける。


階級章がキラリと光り、見た目は一丁前に警察官だ。


準備をしたが、気持ちは重いまま一階の交通課へ向かった。

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