予兆
だいぶ痛みが治まってきた。
腕に巻かれた包帯を見つめながら一人の男は思った。
警察学校を卒業してすぐに配属された北星警察署。
24時間の交番勤務にも慣れ始めたが、行く現場は二つとして同じ内容はない。
すべての現場がはじめましての状況が刺激的でやりがいも感じていた。
それにしてもさっきの酔っぱらいには油断した。
普段どおり声掛けをして、うつ伏せの身体を起こ
そうとしたとき、突然起き上がり覆いかぶさってきたのだから。
しゃがんていたせいで躱すことが出来ずに尻もちをついた状態で上に乗られ、マウントポジションを取られた。
あいつは歯をガチガチ鳴らしながら噛みつこうとしてきた。
咄嗟に出した腕に噛みつかれ、皮を噛みちぎられた。
相勤の部長と応援に来てくれた先輩方のおかげでなんとか抑え込めたがあいつはまともじゃなかった。
みんなはよく見ていなかったが、俺は見た。
あいつの目は黒目しかなかったことを。
思い出したらまた傷がズキズキしてきた。
宿直室で待機を命ぜられたけど喉が渇いた。
持ってきた水は飲んでしまったが一向に喉は潤わない。
頭がフラフラし、周りの音がうるさいほどよく聴こえる。
無線の流れる音、人が走り回る音、誰かが誰かに怒鳴る声。
そして高鳴る心臓の鼓動音。
ガチャっと音がして誰かが宿直室に入ってくる。
視界が狭まってきて誰だがわからない。
「大丈夫?」
若い女性の声だ。これは確か同期の、、、
心の奥底から邪な欲望が沸き上がる。
『喉渇いた、、、』




