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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

友人以上恋人未満の曖昧な彼らの日常

浮気をしまくる腐れ縁を切り捨てられない理由を俺は知りたくない




俺の腐れ縁の友人であり、副社長の康平が取引先の社長の妻と不倫をした。

昔から浮気癖のひどいやつで、前の会社もそのせいでクビ。

会社を興したばかりの俺に泣きついてきたのを、助けてやったというのに、まったく恩を仇で返すような所業だ。

その社長は大物で、彼が目をかけてくれているおかげで、俺の小規模な会社が成り立っているといって過言でない。

いいかえれば、彼に見捨てられたら、会社は一巻の終わり。


もちろん康平を叱りつけ、責め立て、すぐに奥さんと別れるよう迫ったが「じゃあ俺をクビにしろよ」とへらへらと舐めた態度を。

辞めさせて済む話でないし、今ここで「わかった」とうなずかせても、俺の目を盗んでやらかすだろう。

いっそ俺の監視のもと、浮気をさせたほうがリスクが低くて安心ができ、どうせ長つづきしない康平が飽きるまで、ばれないようにして収束させるのがベスト。

康平の浮気は俺に関わることが多く、こうして尻拭いをするのはいつものこと。

さすがに会社の命運がかかるほど、厄介な浮気ははじめてなれど、慣れたもので発覚しないようトラブルが起きないよう、万全のサポートを。


このごろ社長はやたら俺と会いたがって酒のつきあいをしたり、ゴルフや釣りにでかけることが多いので、そういった長く家を空ける場合に康平に連絡して、気兼ねなく浮気をしてもらう。

急な予定変更があれば、もちろんすぐに知らせて、家で鉢合わせないように。

話がくどく、距離感が近く、馴れ馴れしく、スキンシップが多い社長の相手をするのは、正直、疲れるとはいえ、会社を守るためなら、泥沼の訴訟を避けられるなら、キャバ嬢のように接待をするのなんて安いもの。

尻を揉まれて「このごろエッチしてる?」と間近で酒臭い息を吐かれても「さあどうでしょう?」とぎこちなく笑って受け流していたのだが。


その日は社長と遠出のドライブ。

待ちあわせ場所で会ったなり「ホテルを予約してあるから今日は帰さないよ♡」とセクハラを食らわされて、げんなりしたものだが、ふとスマホを覗いたところで社長が「しまった!」と頓狂な声をあげた。


「日にちをまちがえていたよ!今日は重要な打ちあわせの日だった!

春田くん、すまないが、すぐに帰らせてもらうよ!

今から帰れば、家に寄っても間にあうだろうからね!」


「この埋めあわせは絶対するから!」と別れの挨拶もそこそこ、高級車に乗りこんで急発進。

「お気になさらず、どうか安全運転でー」と愛想笑いを浮かべて手をふり、車が見えなくなったところで、慌ててスマホで康平に連絡。

メッセージをろくに読まない康平なので電話をかけるも、コール音が鳴るばかりで留守電に切り替わってしまい。

そりゃあ焦りに焦って何回も電話をかけ、居ても立ってもいられず、俺も車でゴー。

間にあわないと分かっていても、急いで社長宅にむかい、運転しながら電話をかけつづけ、結果、俺の会社はつぶれた。


最悪なことに、康平と奥さんが盛りあがっている真っ最中に社長が帰宅して、ばっちり目撃してしまったらしい。

幸い、性格的にも立場的にも人一倍、世間体を気にする人だったので、騒ぎたてることなく、裁判に持ちこむこともなく、ただ、もちろん取り引きは終了。

これまた幸い、雇っている従業員はすくなかったし、慈悲深い社長が、転職の面倒を見てくれて、あまり後腐れなく、会社を畳めたとはいえ、俺と康平は路頭に迷うことに。

俺は社長ながら、薄給で働き、会社に投資していたから、康平は毎度のことながら、浮気相手に貢ぎまくっていたから。

まあ、万が一に備えたささやかな蓄えがある俺は、二三ヶ月は食っていけそうとはいえ、康平のほうは「家賃滞納して大家に追いだされたー!」と泣きついて会社で寝泊まりしてたから立派な一文無しのホームレスに。


「住まわせてくれー!家事全般やるからー!」としがみついてくるのを「女をつれこむから絶対やだ!」と蹴飛ばす。

自業自得どころか、友人を道づれにしておいて「人でなしー!冷血男ー!童貞のくせに鬼畜ー!」と非難するとは見あげたもの。

いっそ感心しつつ「どうして俺はこいつと縁が切れないんだ?」とあらためて首をひねる。

家族のように愛しているわけではない、弱味を握られてるわけでもない、故人に面倒を見るよう頼まれたわけでもない。

世話をしても、なんの得も利益もなく、親身になって助けてやれば、むしろ迷惑をこうむる。

眉間の皺を深めつつ、財布の中身を数えている康平の横顔を見ていたら、ふと思いだした。

高校生のころ「お前、遊びのつきあいが、わるくなったな」と康平に拗ねた顔でいわれたとき、こう応じたのだ。


「なんか弟が学校でいやなことがあったらしくて、今すごく甘えん坊モードなんだよ。

すこしでも帰りが遅くなると癇癪を起こして泣きわめくし、ちょっと離れるだけで兄ちゃん兄ちゃん!ってパニックになって暴れるし、布団でいっしょに寝ないと、お漏らしをして、兄ちゃんのせいだ!って怒るし」


「うっわーすげーわがままで面倒くさいじゃん、なのに、なんでお前、でれでれした顔して惚気るように話してんの?」


「いやー俺って、自分でも引くほど根っからの世話好きみたいでさ。

困らせられるほど、手を焼かされるほど、理不尽な要求をされるほど、自分が必要とされているように思えて浮き浮きするところがあって、放っておけなくなるんだよね」


康平が財布から顔をあげて「なんだよ?」と訝しげな顔をするのに「まさかな」と苦笑して目をそらす。

気を取り直して「どうしてお前、電話でなかったんだよ」と責めるでなく、純粋な疑問として聞いたら「いやーあの社長、お前にべたべた触りすぎ」と答えになっていない答え。

「は?」と苛だつも、かまわずに「なー!ペット扱いでいいから住まわせてくれー!」とまた駄々をこねはじめ、腰にしがみつくのを「いやだー!」と叫んで引き剥がそうと。


「前に泊めたとき、女つれこんだろ!

すっごい気まずかったし、しばらく匂いが消えなかったし、もうごめんなんだよ!」


「あー、童貞ちゃんには刺激が強すぎた?

でも、そんな気になるのはお前が童貞だからだろ、つまり童貞のお前がわるい」


「どういう理屈だ!大体、俺が童貞なのは、お前の浮気の尻拭いに忙しいせいだ!」


「そっかーじゃあ責任とってやろうか?」と放れたと思いきや、こんどは背中に手を回して顔を接近。

額に額をくっつけ「キスしてやろうか?」と真っ赤でてらてらした舌を垂らして蠢かす。

息を詰めたのもつかの間、すこし頭をのけ反ってかるく額を打ちつけてから、至近距離で睨みつけた。


「やれるもんならやってみろ、舌を噛み千切ってやる」


舌を引っこめて無表情になるも、すぐに奥歯まで剥きだしにして笑い「そうこなくっちゃ!」と跳びすさる。

そのまま走っていき「そろそろ俺の荷物がお前の家に届くころかな!」と大問題発言をしたものだから「やっぱ、お前、殺してやるううう!」と全身全霊で追いかけていった。


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