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ショートショート集・2

天使たちのハロウィン

作者: 青樹空良
掲載日:2025/04/14

「おかあさーん! 羽つけてー! 羽ー!」


 ハロウィンの日、私は背中に白い羽をつけてもらった。

 近所の100均で買ってもらったやつだ。

 ものすごい仮装は出来ないけれど、これだけでもいつもと違う自分の気分は味わえる。

 ちょっぴり天使みたいだ。

 あとは輪っかがあれば完璧だったんだけど。


「いってきまーす!」

「気を付けてね!」


 せっかく仮装をしても、外に出なければ始まらない。

 ちなみに友だちは誰も付き合ってはくれなかった。

 仮装なんかして、外を歩くのは恥ずかしいんだって!

 今日くらいはいいのに。


「あっ!」


 外に出てうろうろしていたら、みつけてしまった。


「いいなー」


 知らない女の子だったけど、思わず私はその子に向かって言ってしまった。

 だって、あまりにも完璧だったから。

 それに、仲間をみつけて嬉しかった。

 ふわふわの白いワンピースに本物みたいな白い羽、それに頭の上には輪っかも付いている。

 私なんか、いつもの小学校に行っているときと同じ服に、ただ羽をつけているだけだ。

 一応、ちょっと可愛いスカートの服を選んではいるけれど全然違う。

 それなのに、


「う、ひっく……」


 女の子は泣いていた。


「どうしたの?」


 私は駆け寄った。


「もしかして、迷子?」


 私が聞くと、女の子はうなずいた。

 

「どこから来たの?」


 尋ねてみても、女の子は泣いているだけだ。

 女の子は私よりも小さい。

 四年生の私よりも年下に見える。

 一年生とか二年生くらいだろうか。

 それにしても、こんな可愛い子が同じ学校にいたら顔くらい知っていそうなのに、見たことがない。


「家、どこかわかる?」

「わかんない」


 女の子が首を振った。

 女の子の声は、本物の天使みたいな声だった。

 すごくかわいらしくて、ちょっぴり高くて、なんだか舌っ足らずだ。


「ね、私、一緒に家探してあげようか。歩いてればわかるかもしれないし」

「ありがとう!」


 女の子がパッと顔を上げて笑った。

 笑顔もやっぱり天使みたいだった。

 私たちは手をつないで歩いた。

 柔らかくて小さな手だ。

 妹が出来たみたい。

 天使の格好をした女の子は、周りをきょろきょろと見ていた。

 しばらく歩いても、女の子は周りの景色に見覚えがないようだった。


「ちょっと休憩しようか」


 私は女の子と公園のベンチに座った。


「もしかして引っ越してきたばっかりとか? それか、おばあちゃんの家に遊びに来たとか?」

「ううん」


 女の子は首を横に振るばかりだ。

 このまま家が見つからなかったらどうしよう。

 なんて、不安になっていたら、


「あ!」


 女の子が空を見上げて声を上げた。


「わー」


 私も女の子の視線の先を見て、声を上げた。


「あれ、天使のはしごって言うんだよね」


 雲の間から、光のビームみたいに太陽の光が差し込んでいる。

 ああいう光のことを天使のはしごと呼ぶのを、前にどこかで聞いた。


「おむかえ、きたみたい!」

「え?」

「いっしょにさがしてくれて、ありがとう」


 女の子はそう言うと、天使のはしごが出ている方へ走っていく。


「どこ行くの!? 待って待って!」


 私の声を振り切って、女の子は走って行く。

 私とまではぐれたら、あの子はもっと本格的な迷子になってしまう。

 だけど、


「!!?」


 私は声にならない声を上げた。

 女の子は背中に付いた羽を羽ばたかせて、天使のはしごへと上っていった。


「え。えええええええ!? 飛んだ!?」


 その姿は本物の天使だった。


「マジ、で?」


 もうかなり上の方まで上がっていった女の子が振り返る。そして、私に向かって手を振った。

 私も手を振り返す。

 女の子が見えなくなるまで、私はぽかんと空を見上げていた。


「天使のはしごって本当なんだ……。レスキュー隊、的な?」




 ◇ ◇ ◇




 家に帰ってから、お母さんに天使に会ったことを話しても、ハロウィンだからねーなんて軽く流されてしまった。


「同じ格好をしてる子と会えて良かったじゃない」

「そういうことじゃなくて、飛んでたんだってば!」

「へー」


 ダメだ。

 全然通じてない。

 あまりにわかってくれないので、もう伝えるのは諦めることにした。

 だけど、


「来年も天使の仮装してもいいかな」


 私は聞いた。


「いいけど、そんなに気に入ったの? 羽つけるだけだから楽でいいけど」


 お母さんは笑う。

 そうじゃない。

 言ってもきっとわかってくれないから、これ以上は言わないけど。

 来年のハロウィンも天使の格好をしていたら、もしかしたらまたあの子に会えるかもしれない。

 なんて、私は思うのだ。

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