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第八話  魔術講義①

説明回です

第八話






 本日は待ちに待った魔術に関する講義だ。

お嬢様の魔力量が大変大きく不安定なため、伸びに延ばされてきた魔術の講義だったが、王都での仕事から戻られた領主が、高名な魔術の講師を連れてきたことで風向きが変わった。

なんでも、貴族の上司に歯向かって謹慎を食らっていたところをこれ幸いと引っ張ってきたらしい。相当な変わり者のようだ。




「初めまして。僕は魔術の研究をしているケイオン。今日から君たちの魔術の先生になります」

ぼさぼさの髪に眼鏡をかけた細身の男性が自己紹介を行う。服装もかなりだらしない。


「さてさて、どこから始めようかな。えーっと、君たちは魔法と魔術の違いを知っているかい?」


すかさずお嬢様が答える


「触媒を使って魔力をなんらかの現象に変換する術を魔術、何の触媒も用いず、自身の魔力のみを使用して同様のことを行うのが魔法です。後者は使い手が限られ、国内でもごく少数しか確認されておらず、その条件は現在も不明なままです」


ケイオンは手をたたいて賞賛する


「ありがとう!模範的な回答だね」


「付け加えると、魔法の方が断然使い勝手がいいんだ。同じ現象を比較しても、魔術は高価な触媒を用意して十の魔力で一が出来るのに対し、魔法は触媒無しで十の魔力で十のことが出来る。効率が圧倒的に違う」


「魔法の発現条件はお嬢様が言うように不透明なことが多い。定説としては、一定の魔力量を持つものが、心の底から願えば神から与えられるなんて言われている」


「確かガイウス様も土の魔法使いだったよね?今度みんなで話を聞きに行こうよ!」


子どもの様に笑いながら説明をするケイオン。

ガイウス様は魔法使いだったのか!まずそこに驚愕していると、お嬢様が質問をする。


「父が土の魔法使いと呼ばれるように、魔法使いはなぜ一つの属性の魔法しか使用できないのですか?」


「それはね、魔力がその属性に特化したものに変質するからだと言われている。反対に魔術は触媒さえ用意すれば様々な属性のものが使えるから、その点では魔術の方が優れていると言えるかも。でもね、僕から言わせれば魔法の方が圧倒的に優れているんだよ。魔法使いは単なる属性の魔法しか使えないと言われているけど、決してそんなことはないんだ」


「どういうことですか?」


「例えば、水の魔法使いにお湯を作ってくれと頼む。そうするとはい分かったとすぐにお湯を出してくれる」


「でも魔術で同じことをしようとすればそうはいかない!少なくとも水を生み出す魔術回路と、それを熱する回路が必要になるんだ!どういうことかわかるかい?この魔法使いは、無意識に本来の属性とは異なる“熱”の魔法を使っているんだ!」


「つまり、魔法は使う本人の認識次第で必ずしも属性に縛られないということですか?」


「その通り!すばらしい!」


興奮したケイオンは頭をなでてくる。


「魔法使いは興味が尽きない存在だよ」


とろけたような顔でそうつぶやく。彼が変わり者と言われるのが少しわかった。




「おほん。魔法の話もいいけれど、君たちはまだ魔力を扱うすべを習っていないのだったね」


唐突に話が変わった。その通り。そちらが本題だ。


「魔力は万物に宿っている。多かれ少なかれ必ずね。普段、魔力は体の中を循環していて、何もしなければ体の外に出ていくことはない」


「でも魔道具に魔力を込めたりする時には体の外に出す必要があるよね?」


「そういった体外に魔力を出す感覚をつかむのが最初の段階さ。これを魔力の“解放”という」


「“解放”を行うのは他者の手助けを受けるのが一般的だ。大体はある程度精神が成熟してきた10歳を超えたころかな。魔力は心と密接に関わりがあるからね」




魔力は生命力とも言え、使いすぎると当然消耗する。ケイオンは嬉々として幼い子供が“解放”を行い、魔力を制御できずにそのまま衰弱死してしまった事例を教えてくれた。

僕とお嬢様は顔を引きつらせるしかなかった。



「さて、“解放”を行うのは簡単だ。現在君たちは魔力を外側に放出する回路が閉じている状態といえる。これを僕が魔力を君たちに直接流して、無理矢理にこじ開けるのさ」



「君たちの魔力は全開で体外に放出される。いきなり全力疾走するようなものだね。これを君たちは抑えるんだ。抑え込もうとするんじゃなくて、全力疾走した後ゆっくりスピードを落とすみたいに、魔力をなだめるよう意識するのがコツかな」



どっちからやる?という問いに対して僕とお嬢様は顔を見合わせる。お嬢様の目には多少の恐怖があった。


「僕からお願いします」




覚悟を決めて手を挙げる。それじゃあ早速やってみようかとケイオンは僕の背後に回り、背中に両手を置いた。


「…おや?マークレイ君だっけ?君、魔力を使ったことある?」


「…いえ、そう認識したことはないです」


心当たりは一つあるが、そう答える。


「まあいいか。今は回路は閉じているみたいだし。じゃあ魔力を流すね。すぐわかると思うから、ゆっくりなだめて落ち着かせるんだ」



すると背中から何かが流れ込んできた。強烈な違和感。その感覚が全身にいきわたると、唐突にそれは来た。




全身から風が吹き出てくるような感覚!

大きな風船に小さな穴がいくつも穴が開いて、そこから一気に空気が漏れ出ていくように、身体から何かが勢いよく噴出している!


「回路を開いた!わはは!すごい魔力量だね!」


「魔力を落ち着かせるんだ!勢いよく放出する魔力の噴出口をゆっくり閉めるように!」



ケイオンが何か言っている気がするが耳に入らない。



僕は新たなこの感覚に集中する。すごい勢いで身体から出て行っているのがわかる。

違う。こうじゃない。これでは動けない。

父はこうじゃなかった。あの戦いのとき、父は魔力を鎧の様に纏っていた。




この力は僕の一部。感じ取れ。魔力を身体の周囲に留めるんだ。いつものように、身体の動きを感じろ。同じだ。これも僕の身体の一部。そして流れを操作できる。イメージは圧縮だ。



魔力は心と連結している。目をつむり、自身の内側に潜り深く集中を続けると、ふいに感覚が変わる。



「これは…“纏い”なのか?初めて魔力を扱ったのに?」


「それにしても…なんて美しい魔力の流れだろう」



目を開く。…すごい、全能感に溢れている。今なら空も飛べそうだ。

何より、薄皮一枚程度だか、僕の身体を光の膜が覆っている。父と同じ、蒼き輝きを放っている。


「すごい…」


掌を眺めながら感動に浸っていると、力が抜け、光が収まった。

酷い脱力感とともに、滝のような汗が噴き出てくる。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ、はぁ」


荒げた呼吸を何とか整える。呼吸は少しずつ治まってきたが、ひどい倦怠感は変わらない。


「いやー、お見事!」


「君、魔力を収めようとせずに留めようとしたでしょ?あれね、“纏い”っていう技術だよ!」


「戦いを生業とする人の必須技能とも言えるね!魔力を纏って攻撃すると、威力が全然違うんだ!肉体の耐久力もね!」


「初めて魔力を使った人間とは思えないよ!魔力の扱いが実にスムーズだった!」


本当に今まで魔力を扱ってこなかったのか、普段は何しているのかと、質問攻めにしてくるが今は体がだるくてうまく答えられない。




しどろもどろとしていると、リーシャお嬢様が険しい顔で前に出てきた。



「次は私の番です。宜しくお願い致します」



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