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君の傷つけ方なら知っている  作者: 三愛 紫月
結婚生活なら知っている
9/95

亮の話④

俺は、寝室の扉を開けた。


「葉月」


こっちを向かせた葉月は、薄明かりでもわかる程に泣いていた。


何で、泣いてんの…?


「明日、仕事だから」


「葉月、しようか?」


「私としても妊娠しないよ」


「だったら、生で出来るだろ?」


「亮…」


葉月の目からは、涙が、どんどん流れてきてる。


葉月を傷つける方法を俺は知ってる。


「しようよ。葉月、俺達まだ夫婦なんだから…」


「妊娠しないけどいいの?」


「わからないだろ?」


「卵子が腐ってるのにいいの?」


「正常かもしれないだろ?」


「卵子が老化してるのにいいの?」


「わかんないだろ、葉月」


「排卵してなくて、無駄遣いの体だけどいいの?」


葉月の目から涙が流れていく。


「葉月、わかんないだろ」


葉月は、俺の頬に手を当てた。


「いいよ、そうしたいなら」


そう言った瞬間、瞳の色が消えた。


真っ黒になって、葉月の目がなくなった。


まるで、眼球をくりぬかれたように真っ暗な穴が広がってる。


その黒から滲み出るように水が湧き出ている。


「亮、どうしたの?」


葉月は、俺の頬をさらになでる。


俺は、葉月をこんなにも追い詰めていたんだ。


そして、俺自身も知らない間にこんなにも追い詰められていたんだ。


「葉月」


「いいよ、して」


葉月は、そう言って俺のパジャマのボタンをはずしてく。


俺は、葉月を自分の上に乗せる。


葉月の涙が、ポタポタと俺の胸に当たってる。


俺も葉月のパジャマのボタンを外す。


「別れるまで、ずっと抱かせろよ」


「いいよ」


「葉月」


新しい人を見つけて幸せになってくれって言えなかった。


「何?」


「やめようか?」


「ううん。亮を覚えておきたいから」


こんは俺を葉月は、覚えておきたいのか…。


「どうしてだ?」


「愛してたからよ」


「葉月、俺、ごめん」


やっと、葉月に謝れる。


「謝らないでよ」


「本当ごめんな」


葉月の目から、大量に涙が溢れてる。


「亮は、私を愛してくれてた?」


「愛してたよ」


「本当に?」


「本当だよ」


葉月は、ニコって笑った。


でも、目には一ミリも光が宿ってなくて…。


「それなら、よかった」


葉月は、そう言った。


葉月のズボンに手をいれる。


「もう、いれていいよ」


「まだ、駄目だよ」


俺は、早く終わりたくて葉月に酷いやり方を散々してきた。


だって、長くしようが、短くしようが、葉月は妊娠しないんだから…。


でも、きっとそれが余計に葉月を不安にさせて傷つけたんだと思う。


痛いよって言われてもやめなかった。


なのに、別れようって言われたらこんなに優しく丁寧にしようとして、今さらだよな。





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