静馬の話⑤
どんな出会いをしたかとか、どんなものが好きかとか、他愛ない話をしあった。
僕は、お酒が入っていて俊太の話をしてしまった。
軽蔑されるそうギュッと目を瞑った瞬間だった。
ガンッ…。
ビールジョッキを浅野は、机に置いた。
「最低だな!江島の気持ちを利用して、何様なんだ。今から文句言ってやる」
「浅野、いいよ」
「健ちゃん、今日は酔ってるからやめなよ」
「わかった」
浅野は、そう言いながらもすごく怒っている。
「浅野君は、いい人だね」
慎吾の言葉に浅野は笑った。
「阿藤君、俺はいい人じゃないよ!好きな人を傷つけられるのが嫌いなだけだ。トイレ行ってくる」
そう言って、浅野はトイレに行った。
美香さんは、浅野がいなくなって話し出した。
「江藤さん、阿藤さん、健ちゃんと仲良くしてあげてね」
「勿論だよ」
美香さんの顔がパアーって明るくなった。
「よかった」
「よかった?」
「うん、健ちゃんね!人から、嫌われてるの」
「どうして?」
「話したのかな?健ちゃんのタイプ」
「聞きました」
「そう、それで!嫌われてるの。」
「幼い子が好きだから?」
「そう!でもね、別にとって食おうとか考えてないのよ。ただ、好きなだけ。それは、多分小学六年生の時にね!5歳の美紀ちゃんって女の子を助けられなかったからなの」
「助けられなかった?」
「うん、川に溺れてね。死んじゃったんだって。お祖母ちゃんちに帰る度に、健ちゃんとお兄さんについてきた子でね!妹みたいに可愛がってたらしくて!美紀ちゃんを亡くしてから健ちゃんは、幼い子が恋愛対象になったみたい。でも、今は薄れてるのよ!だけど、世の中的には駄目でしょ?だから、嫌われてるの。会社でも…」
「会社でもですか?」
「そう!同級生の三好君がね。取引先の人で、バラしちゃったのよ。その話」
美香さんが、そこまで話すと浅野が戻ってきた。
「また、つまんない事話したのか?」
「つまんなくないよ!健ちゃん、嫌われてるんだよ!何もしないのに」
「世間は、そうは思わないって話したろ?」
「それは、わかってるけど」
「まあ、わかってもらわなくたっていいよ!」
「僕は、わかるよ」
「えっ?」
「僕は、浅野の友達だから」
「僕もだよ!浅野さん」
浅野は、泣いていた。
僕のように、浅野の人生も辛かったのがわかった。
僕達は、ご飯を食べ終わって店を出た。
「じゃあ、また」
「また、ご飯行こうね」
「はい」
「さよなら」
浅野と美香さんは、タクシーで帰って行った。
「歩こうか、慎吾」
「うん」
僕と慎吾は、手を繋いで歩きだした。
世間の常識とか当たり前なんて知らない。
もう、そんなのに振り回されなくていい、友達と恋人を僕は見つけた。
「静馬、愛してるよ」
「僕も慎吾が好きだよ」
この先、どんな事があっても笑い合おう。慎吾、約束だ!