静馬の話①
慎吾と出会って、初めて呼んでするかどうかの話しになった時だった。
慎吾は、性暴力の話をしたんだ。
「静馬さん、僕、頑張れますから」
「今日は、やめようか?」
「嫌です!頑張りますから」
繰り返し、慎吾はそう言った。
その相手は、初体験だったと言った。
「彼は、いわゆるノンケと呼ばれる人でした」
ポツリ、ポツリとそう話した。
慎吾は、無理矢理やられた事を話した。
「何で、そんな事?」
「誰でもよかったんだと思います」
会社で働いていた慎吾は、酔っぱらた相手から、何度もその屈辱を受けた。
「だから、僕。あそこで、お弁当食べて、救われて会社やめたんですよ」
その行為は、一年に及んだ。
それから、恋愛が怖くなったて話した。
「好きだって言わなかったらよかったです」
18歳だった慎吾は、4つ上の先輩に告白をした。
受け取られたはずの気持ちは、性の捌け口として利用される為のものだった。
「静馬さんの気持ちわかりますよ。僕も彼にたってるのひくんだけどって言われましたから…。電気消して後ろからならわかんないかって」
震える慎吾にやめようと伝えると、いい加減忘れたいからして下さいと言われた。
「優しくするから、店長さん」
僕は、ありったけの優しさを注ぎながらしたんだ。
終わったら、慎吾は泣いていた。
「僕、ガラス細工みたいだったー。嬉しい。こんなに大切にされて嬉しい」
そう言って泣いた慎吾をみてホッとしていたんだ。
なのに、僕も自分勝手に慎吾を振り回した。
申し訳なかったと…。
俊太がいなくなって、慎吾のメモを見ながら思い出していた。
「はあー。駄目な人間だ」
ピンポーン
夜七時頃だった酔っ払った俊太を連れて、中学の時の浅野がやってきた。
「久しぶり、江島」
「久しぶり、で!何で?」
「静馬ん家、静馬ん家って言われ続けたからさー。連れてきた」
そう言って、俊太を渡された。
「珈琲いれるよ」
「ああ」
僕は、珈琲をいれて浅野に渡した。
「江島って、俊太の前で勃起したんだって」
「はあ?」
その言葉に、酷く動揺して心臓が張り裂けそうだった。
中学の同級生の加藤が「加藤、うんこ漏らしたって」とみんなに言われてた、あのテンションで聞かれていた。
少し興味深く、僕を見つめてる。
「女の子好きとか噂なかったけど、江島ってそっちだったの?」
その目は、僕を軽蔑していた。
「そんな事はないよ」
そう答えた自分は、酷く惨めな存在だった。
「そうだよな!疲れてたらなるから、気にすんなよ」
「俊太が、言ったのか?」
「ああ」
浅野は、珈琲を飲んでいた。