表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の傷つけ方なら知っている  作者: 三愛 紫月
結婚生活なら知っている
6/95

亮の話①

「離婚して下さい」


「急にどうした、葉月」


「急にじゃないから」


「理由は?」


「赤ちゃんが、出来ないから…」


結婚五年目の今日、俺は記念日ディナーを楽しんだ後で、離婚届を渡されていた。


俺の名前は、真島亮(ましまりょう)。そして、妻の真島葉月(ましまはづき)だ。


「それは、治療してみたら」


「治療して授かっても、私は亮の子供を愛する自信がないの」


「浮気してるのか?」


「ううん」


「好きなやつができたのか?」


「ううん」


「じゃあ、何でだよ」


「亮を愛してるかわからなくなったの」


そう言いながら、何故か葉月は泣いていた。


「なんだよ。それ」


「ごめんなさい」


「ごめんじゃないよ。俺、別れたくないよ」


「それなら、3ヶ月待つから」


「3ヶ月で葉月の気持ちを失くせって言うのかよ」


「ごめんなさい」


「葉月」


「お願いします」


葉月は、涙を流しながらリビングを出て行った。


何で、葉月が泣いてんだよ。


別れを告げられて、悲しいのは俺なんだよ。


俺達は、友人の紹介で33歳の時に出会って3ヶ月のスピード結婚をした。


あれから、5年だ。


俺は、友人や職場の同僚が後から結婚して父親になっていくのが羨ましくて堪らなかった。


「治療しろよ!絶対、その方が早いから」


「マジで、治療しろって」


不妊治療で、一年も経たずに出来た先輩達に、飲む度にそう言われていた。


ネットで見ても、治療して出来た人で溢れ返っていた。


友人の斗真は、俺より二年遅く結婚した。不妊治療で、すぐに授かり、俺に自慢した。


「頑張ってよかったわー。亮も早い方がいいよ。年取ったら、子育てキツイって」


お前がするんじゃないだろうと突っ込みたくなった。


「マジで、早い方がいいから」


それは、親戚や両親にも言われた。


不妊治療さっさとしたら、すぐできるんだからって


本当に出来るかどうかわからないものに、人生をかける事程、怖いものはなかった。


「葉月が別れたいのは、あの日の事か?それともあれか?何なんだよ」


俺は、離婚届を見つめながら泣いていた。


子供がいなきゃ完璧な夫婦じゃないと思っていた。


子供がいないと成立しない関係なんておかしいと子供がいるやつに言われたけれど、説得力なくて笑えた。


いない人が言うならわかるけど、いるお前が言うなって思った。


男だけど、誰の幸せも願えない小さい人間になったのを感じる。


従兄弟が、43歳で独身でよかったってホッとしていた。


でも、どうせ結婚相手出来たらすぐに妊娠しちゃうんだろうな…。


普通のやつは、すぐに出来るんだろ?


簡単にさ…。


葉月を離婚に導いたのって、あの日なのか?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ