葉月の話③
「ごめん、ずっと聞いていたいけど…。体調悪いから、ごめん」
原因はないけれど、私は生理が凄く重い人間だ。
生理痛が酷くて、聞いてられなかった。
暫くすると、亮がやってきた。
お酒臭い。
やっぱり飲まずにはいれなかったんだ。
「葉月、チンする湯タンポ持ってきたよ」
あの側面だけを切り取れば、亮は酷い人間だけれど…。
妊娠や子供がなければ、優しくていい夫なのを私は知ってる。
「ありがとう」
「これ、妊活でもいいらしいけど…。生理痛にもいいって、薬ばっかりじゃよくないだろ」
「これ、なに?」
「ルイボスティーだって!」
「買ったの?」
「うん、斗真の嫁が飲んでたから帰りに買ってきた」
「ありがとう」
亮は、私を抱きしめてくれる。
「葉月」
「なに?」
「晩御飯、自分で食べるから休んでて」
「ありがとう」
「うん」
私は、お茶を飲んで亮にカップを渡した。
大丈夫!私は、まだ平気だから…。
「葉月の卵子腐ってんじゃないの?老化してんじゃないの?」
正也さんに子供が産まれた、帰宅した亮の言葉に、パリパリって聞こえた気がした。
私、もう大丈夫じゃないかもしれない。
引きずるように、寝室のベッドに横になった。
涙が止まらない、体に力を入れられない。
無理なんだ。もう、多分無理なんだ。
認めたくなくて抗ってる。
心が、必死で戦ってる。
「葉月、しよう」
どうにか、受け入れられた自分を褒めてあげたい。
こんなに、愛してるのに…。
どうして、私の心が死んでいくの…。
離婚を切り出してからの三ヶ月間は、結婚してすぐの亮だった。
「葉月、お疲れ」
「ご飯出来てるよ」
「葉月を食べさせてくれる?」
「何、言ってんの」
子供なんて出来ませんってハッキリ言ってもらえてたらこんな幸せが永遠に続いていたんだ。
「駄目?」
「いいよ」
「ヤッター」
亮は、私を抱きしめてベッドに連れてきてくれた。
「葉月、優しくするから」
亮、亮、亮、全身が亮を欲しがる。
「まだ、出来る」
「凄いね」
「葉月が可愛いからだよ」
「亮、愛してる」
「愛してるは、いらないよ。俺達、別れるんだから」
私が決めたさよならなのに、胸が痛くて死にそうだった。
でも、あの日々には戻りたくない。
あの日々は、いらない。
「亮、亮、亮」
「葉月、凄い。ヤバい」
もっとして、私を亮で満たして…。
そして、私達は離婚した。
五日後、私は職場の人とお酒を飲んで帰ってきた。
生理痛が、酷い。
「亮ちゃん、湯タンポちんして」
ベッドに寝転がって言ってた。
「離婚したんだ」
プルルルー
『もしもし』
「亮ちゃん、湯タンポちんして」
『生理痛酷いのか?』
「酷い、痛い、擦って」
子供みたいに言っていた。
『一人で何とかしなきゃ駄目だよ』
亮は、そう言って穏やかな声を聞かせてくれていた。