東子の話③
私は、わかったと返信した。
家に帰ると、拓実君からメールがきた。
【とこちゃん、後13日だよ!今日もお疲れ様】
【お疲れ様。楽しみだね】
送信するのを躊躇いながらも送った。
【とこちゃん、大好きだよ】
言わないで…。
【ありがとう】
【俺、とこちゃんの事本当に好きだから!信じてね】
言わないで…。
これ以上、好きだって言わないで…。
【信じてるよ】
信じられるから、困るの…。
お願いだから、もう好きだって言ってこないで…。
【疲れたから、もう寝るね。おやすみ】
【おやすみ】
メールを続ける気分じゃなくて、終わらせた。
拓実君が悪い訳じゃない。
私が、拓実君を気に入ってきてるのが悪いんだ。
ベッドに、ゴロンと、横になった。
何て、別れ話をしよう。
映画館で、デートが終わった後に話す?
それとも、帰り道?
明日にでも、話す?
まだ、余韻に浸りたい。
まだ、拓実君への気持ちが芽生えたばかりだから…。
だから、大丈夫。
手放せるよ!
だから、大丈夫。
私は、拓実君からのメールを読み返していた。
【とこちゃん、大好き】
その文字をなぞる。
拓実君、お別れしたくないよ。
終わりにしたくないよ。
せっかく、拓実君を好きになれるって、向き合えるって思ってきてたのに…。
お別れなんかしたくないよ。
涙が溢れて、止まらなかった。
それでも、さよならをしなくちゃいけない。
拓実君の幸せの為だから…。
映画デートの日がやってきた、本当は行きたくなかった。
けど、私は映画に行ってしまった。
「とこちゃん、映画よかったね!」
「うん」
「お昼ご飯、何食べる?」
「あっ!ごめん。叔母さんから連絡来てた」
「そうなの?」
「うん、大事な話があるって!帰らなきゃ」
「わかった!じゃあ、またメールして」
「ごめんね、バイバイ」
「バイバイ、気をつけてね」
これ以上いると、別れられなくなりそうだった。
だから、私は拓実君に嘘をついた。
近くの公園のベンチに座った。
言わなきゃ、言わなきゃ!
ちゃんとバイバイしなくちゃ…。
結局、夕方まで公園のベンチに座ったまま時間が過ぎていた。
私は、深呼吸して拓実君にかけた。
『とこちゃん、今何て言ったの?』
「ごめんね、私、拓実君を好きになれない」
『そんなのいいっていったよね』
「申し訳ないから、だから、わかれようか」
『嫌だよ、別れないよ。とこちゃん、何でそんな事言うの?』
「令二君への気持ちが、全然なくならないの。だから、ごめんね」
『俺、とこちゃんと結婚したいんだよ!だから、別れるなんて言わないでよ』
拓実君が、悲しそうな声を出していた。