プロローグ
よろしくお願いします。
「ただいまー。」
玄関のドアを開けて居間の電気をつける。
すぐさまダイニングテーブルに鞄を置くとゲームソフトを取り出した。
『偽りの幸福Ⅷ〜光と闇の狂想曲 』
乙女ゲームと本格ファンタジーRPGが合わさったような世界観とシナリオが人気のゲームだ。
かの有名な日之本ゲームズ様の超大作であられる。
このシリーズは昔から私もお世話になっている。
フィルムを剥がしケースを開けると説明書を取り出して、食い入るようにキャラクター一覧を見る。
そこには登場キャラクターのイラストと声優が描かれており、私はとあるキャラクターを探していた。
(えっと、イーリアは───────────あった。)
【イーリア・ファミリス
CV,|碧葉美月《あおばみづき】
碧葉美月。私の名前だ。声優をやっている。
今をときめく大スター───────────とまではいかないが最近そこそこ知名度がある……はず。
イーリアとは、ゲームに毎回出てくるヒロインキャラクターである。
Ⅷはどちらかというと恋愛要素が強く、過去作品のヒロインであるイーリアが主人公だそう。
薄桃色の髪と金色の瞳、女神様のような性格のキャラクターデザイン。
必死に貯めたお金で買ったPS5の中にブルーレイディスクを突っ込むとソフトの読み込みが始まり、コントローラーを持った。
「♪〜」
オープニングが始まった。
一通り聞いたメインキャラクターの面々が映る。
私は、発売後やるつもりだったのでシナリオを内緒にしておいてもらったので詳しいことはわからない。
ただ、シナリオを聞いた同期の夏那ちゃんが感動していたのもありニマニマが止まらない。
オープニングが終わりプロローグが始まった刹那、辺りが揺れ始めた。
(ん?地震?最近滅多に起きないのに…。)
『ガッシャーン!』
何気無く音のした方を向くと食器棚が倒れていた。
どんどん揺れが強くなり、マンションの高層階はそれはもう揺れる。
時計の振子にでもなったほどの強さになると───────────天井から何かが落ちてくる。
“ソレ”はLEDの照明だった。
「うわぁ!」
自分の口から出たのは小さな叫び声。
グチャりと何かが潰れる音がすると、意識が朦朧としてくる。
(親孝行…しておけば良かった。里帰りも。)
長いようで短い三〇年間の人生。
その最後に私の心に浮かんだものは───────────
もう碌に二年とちょっと、会っていない両親のことだった。
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