転機転輪。
「お前、リュシーか?!」
支度を整えた私を指差し、アルスロット様は驚愕した様子だ。
「なんですか、人を指差して」
「いや、だってお前!」
「それより早く案内して下さい、遅刻なんて洒落になりません」
「あ、ああ・・・」
様子のおかしいアルスロット様は手を差し伸べて来た
「? なんですか?」
「エスコートするのが当然だろう」
「要りません、庶民にその様な、早く行きましょう」
「・・・おう」
ん?なんでそこでしょんぼりするのか?
それにしても、ああ・・・
青空なんていつぶりだろう
太陽を見れるなんて
まともに光を拝んだのは数年単位だった、ついつい口をついて出る
「綺麗・・・」
「ん?」
「ううん、なんでもないです」
そうして王妃の間へと到着する
道中、すれ違う騎士様、侍女、文官やら
全員にやたらとジロジロ見られた、まあ病的な白さの人間が突然彷徨いていたらそうなるか・・・
ヴェールを脱ごうとすると
「王妃様からはヴェールを羽織ったままで良いと言われております」
至れり尽くせりだ、ここまで配慮して貰えるなんて。
中へと入ると、侍女が1人と黄金の髪に碧眼の美人がソファーに座っていた。
侍女さんは目を見開き此方を凝視してきた
真っ白だから珍しいのだろう、夜しか外に出ない私は人と会わないしね。
そして、いつの日か遠目で見た王妃様からお言葉を賜った。
「予想以上だわ・・・」
「ですね」
「はい?」
「こちらの話よ、よく来てくれましたね、さあかけて?」
「王妃様、この度は過分な御配慮痛み入ります・・・」
何やら怪しい挨拶になってしまったけど仕方ない、淑女教育も中途半端だから
まあ丁寧に謙るしかない。
「良いのよ、恩人には報いなければね、陽の光は毒なのでしょう? わたくしの我儘で呼び付けるのだからこれくらいはね」
「は、はあ、恩人、ですか? 失礼ながら私は何も・・・」
「あら、マリーアから聞いていないの?」
「マリーア、ですか?」
なんだっけ?
「お肌のクリーム2種類と石鹸、献上してくれたのでしょう?」
んん!?確かにいつの夜だったか献上していい?なんて言われてあげたけど、まさかの王妃様に献上したの!?
いや、マリーアは王室付きの薬師だからそりゃそうか
でも普通マリーアの名前で献上すると思うよね、何故私の名前で献上したのか・・・
「えーっと・・・」
「違うの?」
「いえ、あ、はい、そう、ですね・・・、私が作りました」
「でしょう? だから、ありがとうルシエルさん」
「大したものでは有りませんから」
「そんな謙遜しないで本当に感謝しているのよ、お陰でリュミエールの肌荒れも治ったし、白粉の件もあるから・・・」
リュミエールとは王妃様の御子、姫様だ。
今年3歳になる、王妃様が17の時に産まれた第一子
どうやら汗疹とかが酷く、色々と手を尽くしたけど中々肌に合う物が見つからなかったらしい
そこでマリーアが試しにと私が作った物を検分して王妃様に献上した。
成程、話がやっと見えて来た
姫様の肌に合ったのか、肌荒れ汗疹がスグに良くなり
1週間経つ頃には綺麗なお肌になっていた。
恐らくだけど姫様も肌が弱いのだろう
私程ではなくとも肌が弱い人にとって肌につく物の厳選は命懸けにもなりうる。
石鹸とか既存のもので低刺激の物が無いから私も自作した訳だし。
私なんて陽の光の遮断に失敗したら本当に命に係わるし、姫様にとっては将来珠のお肌にシミでも残る様な事になれば国の損失になるからねぇ・・・
肌最弱な私が使っている物だからこそ、姫様の肌にも刺激せずに良く作用したのだと思われる。
しかし
「白粉・・・」
「ええ!白粉の事もマリーアから、ルシエルさんから指摘されたと聞いています」
うん、白粉ね!
覚えてる、一時期美肌(笑)が流行ったんだよね
アルビノの私からすると馬鹿らしい事この上ない流行だけど、世の奥様令嬢様達は白くなる事に必至になった時期があった。
でもこの世界の白粉は地球の時と同じで「鉛」が入ってたんだよね
美肌=白粉が流行った時に、念の為マリーアに言ったんだよ
「白粉、検分してみて、特に王妃様の周りは禁止した方良いかもね」
なーんて気軽に言ったら、鉛が結構入っていて大騒ぎ
当然鉛は人体の健康に悪い
城、ひいては国で鉛入り白粉の禁止になると言う事件だ。
幸い、王妃様は使っていなかったけど
王妃付きの侍女の何人かがお暇させられたという事は後でマリーアから聞いた。
大人の王妃様なら即座に健康を害す事は無いけど、赤子の姫様はそうもいかない
お暇戴いたのは姫様に接していた侍女だったのだろう。
更には水銀白粉の指摘もして
結局白粉自体を国謹製の安全な物を開発
売り出す事で国庫が潤った事をルシエルは知らない。
て言うか、白粉の件も私の名前出したのマリーア・・・
普通何も言わずに上奏しないかな?
わざわざ洗濯婦の名前を出す必要性が無いのに。
などと色々考えていると王妃様がとんでもない事を言い出した。
「それでね、ルシエルさんを王室付きの薬師見習いにしようと思うの」
「ふあ!?」
何言ってるの!王妃様!




