舞踏会、そして
「なんとか、と言ったらどうだと言うのですか?」
横合いからクスリと笑ったのはマリーアだった、彼女の行動は一見煽っているようにみえるがその実、私から視線を逸らし、周囲からの視線を意識させる為の婉曲な皮肉だった。
実際、元母はハッとして扇子で口許を隠したまま眉をひそめた、人目が無ければ舌打ちをしていただろう表情だ。
元母は止まった、しかし止まらなかったのは元妹の方だった。
王族が入場するファンファーレの合図とそれは同時、近くにあったワインを手に取りマリーアに掛けようとしたのだ。
グラスに手を伸ばした瞬間、私は反射的にマリーアと妹の間に身体を滑り込ませた、この子の事だ私と一緒に居るから同じ洗濯婦と思い込んでやりかねない。
マリーアはれっきとした令嬢、私のような王妃様に目をかけていただいているものの平民である存在とは違う。
パシャッ!!
「エルシー!?」
「あっ、アンタが悪いのよ、相変わらず白い肌をしてるんだから、コレで丁度よく赤みが差したわね!」
純白のデビュタントドレスに赤ワインの染みが広がった、目敏い王妃様やお傍に侍る予定となっていたエクス王子殿下達がそんな光景を見逃すはずがなく、文字通り水を打ったような静けさが会場を包んだ、私、しーらない!
「っ!」
最初に動いたのは姫様だ、近くに控えていた侍女に何か指示をすると侍女は静かに会場の外へと去っていった。
「ルシエル様!」
「やー、あはは、恥ずかしい所をお見せしました、」
「そんな事より、此方へ!着替えを指示させましたわ!」
わー、あーれー!
姫様とは実はかなり意気投合している、同じアルビノとして苦労話からメイク、衣装についての色合いの組み合わせなど、似た苦労と気質をお互いに持っていたのだ。
姫様は私の手を取って血相を変えて歩き出す。
アルコールに弱いんだよね、飲むと真っ赤になるから被ってもあまり良くない。
多分姫様も知っているから慌てているのだろう。
「ごめんエルシー、彼処まで子供だとは思わなかったの」
「ううん、マリーアのせいじゃない、あの子、昔から元母に猫可愛がりされてて本当に子供なの・・・」
いや、まさかここまで短絡的な行動を起こすとは私も思っていなかったけどね、家を出てから数年経っていたし、淡い期待はしていたんだけど。
いやあ、入場したばかりの姫様が私なんかと即退場なんて本当に申し訳ない。
あの場に居るのもちょっと気まずいから、あっちはあっちで全部丸投げなんだけどね。
ちょーっとアルビノを、差別的な発言が響いちゃったから元母は蒼白だった、姫様の様子を見る限りは気にしてなさそうなので、言われ慣れてるんだろうなあって感じだけど、だからと言って隣国の殿下の耳に聞かせて良い事ではない、エクス殿下はシスコンっぽいので穏便に収まれば良いんだけど・・・




