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青天の霹靂1

「カ、カームよ。お、落ち着いて聞いてくれ。今、王都アルセルより、非常に残念なお知らせが届いた。覚悟してそして決して騒がずに呑み込むのだ…」

 

 アルセル王国の辺境にドラゴンが出たという通報を受けて何とか退治して、凱旋する姿を想像して意気揚々と猛っていた帰り道。突然、中央から伝書鳩が飛来して、封書を落とした。


「その知らせってかなり重度の高いものなのですか?」

「残念ながら…。悔やんでも悔やみきれぬ。偽報である事を願うばかりだが、印は本物であった…。」


 この時の俺は、どうせスタンリード(魔物の大氾濫)でゴブリンとかコボルトが出現したのだろうか、と考えていた。しかし、これは毎年のことだし、恒例行事だからクルス隊長がここまで震えるのはおかしいのだ。

 だから重大事態が発生したと認識して深呼吸して心を落ち着けた。だが、次の言葉を聞いたとき、俺の目は温泉が吹き出したように飛びそうになった。天国から煉獄を超えて、地獄を突き破っても足りない事態が起きていたからだ。


「今、中央から連絡が来た。革命勢力が王都を陥落させたようだ。国王様は幸いにも存命であられるが、クリニヒト公爵領に幽閉されているらしい。王都は、アルセル共和国などと謳って民衆を先導した結果、火の海だとのことだ…。誠に無念だ!クソッ!近衛隊や他の騎士団は何をやっていたのだ!!」


 クルス隊長はその場に崩れ落ち、騎士のプライドをかなぐり捨てて嘆き悲しんだ。他の騎士たちはまだ状況が飲み込めていないようで、焦点が合わない瞳を宙に向けている。

 先までどんちゃん騒ぎしていたのが嘘のようだ。時が止まった、という表現が最も当てはまるだろう。


「カーム副隊長!続報です!」


 虚空を見つめていると、王都の方角から息を荒らげた部下が膝をぐっと握りしめ、早馬に乗って来た。馬から降りた彼の膝は赤黒く滲んでいる。


「ベクター!アルセルはどうなっているのだ!簡潔に答えろ!」


 ベクターは手を滑らせながら封書を取り出した。王族の印によって封じられた手紙は殴り書きで、急な事態だったことを物語っている。


「ベクター、ご苦労。私はクルス隊長に確認をとってくるから、それまで休んでいてくれ。だれか!ベクターに水を頼む。」


 仲の良かった騎士の仲間や友人、義兄弟の顔を懸命に振り払いながらクルス隊長の下へ走った。

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