第二話
異世界で暮らし始めて一週間が経過した。俺はとりあえずこの世界で生きていくために、今はバイトをしている。
バイトをすることによって生活費を稼ぎながら、魔法を学ぼうという魂胆である。
「新入りー、次はこっちだー!」
「はい、今行きます!」
俺は鍛えた筋肉を生かして、ガテン系のバイトをしている。今は、頼まれたものを運んでいるところだ。
「持ってきました!」
「なっ!? 一気にこんなに持ってきたのかお前! 凄い力だな」
「はい! 筋肉には自信があります!」
「新入り―、次はこっちー」
「はい、今行きます!」
慣れてくるとこのバイトもなかなか楽しいものだ。体を動かすのはやっぱりいい。気分が晴れやかになる。
バイトで稼いだ生活費で、格安のかなりぼろい宿に泊まりながら、俺は魔法の勉強も欠かさずにしている。
どうやって魔法を勉強しているかというと、街の商店街で売っていた『馬鹿でもできる! 初級魔法』というあまりにもなタイトルの本を購入して毎日勉強しているのだ。
だが、正直に言おう。俺は、本を読んだだけではさっぱり魔法を覚えることができなかった。何度も何度も繰り返して読み、練習も繰り返しやったが何一つとして使うことができなかった。
もしかして、俺には魔法の才能が無いんじゃないだろうか。そんなことを少し思ってしまったが、そんな事はないはずだ。違う方法を考えよう。
色々と頭を悩ました結果思いついたのは、そこら辺にいる魔法使いっぽい人に頼み込んで初級魔法を教えてもらうことだ。なぜ、最初からこうしなかったのだろうか。よく分からない。
俺はバイトをしながら、そこら中の人に魔法のコツなどを聞きまわり、練習に練習を重ねた。やはり、人から直接教えてもらうのは、本を読むよりもかなりわかりやすかった。
そして、さらに一週間が経過した。俺はなんと、またしても一つも魔法を習得できなかった。
もう二週間もたったのに、魔法を習得する気配が全くない。流石にそろそろやばいんじゃないだろうか。焦り始めてきた。
俺は、その辺にいる魔法使いっぽい人だけでなく、冒険者ギルドにいる魔法使いの人にも魔法を教えてもらおうと決めた。冒険者ギルドとは、冒険者と呼ばれるモンスターの討伐などを生業とする人たちが集まる場所のことだ。
とにかく魔法を覚えたい!片っ端から声をかけまくるぞ。
そして、片っ端から声をかけまくった結果、親切な魔法使いの人に丁寧に魔法を教えてもらうことができた。
「うーん……。攻撃魔法が難しそうなら、補助魔法を先に覚えたらどうだろう」
「補助魔法ですか」
「そう。補助魔法っていうのは、自分や他人の身体能力とかを強化することができる魔法のことだよ」
「わかりました。やってみます!」
そうして俺は、親切な魔法使いさんの指導の下補助魔法を練習することとなった。
そして、さらに二週間が経過した。俺はついに一つ魔法を習得することができた。その魔法とは、身体能力強化魔法である。魔法をかけた相手の身体能力を向上させる補助魔法だ。攻撃魔法と比べると地味ではあるが、俺もついに魔法使いになることができたのだ。
だが、嬉しいことだけではなく残念なこともある。親切な魔法使いさんの指導の下でも、俺は他の魔法を覚えることができなかった。どうやら他の魔法を覚えるのは無理そうである。
俺は決めた! 一つ魔法が使えれば立派な魔法使いだ!
俺はこの魔法だけで魔法使いとしてやって見せる。この魔法を限界まで極めよう。そう決心して、俺は修業を始めた。