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思考実験劇場  作者: 坂本小見山
「今」という聖域
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半世紀前から来た映画監督

「皆様、こんにちは。話題の文化人にスポットライトを当てるカルチャー・ブランニューの時間です。本日のゲストは、先日地球に帰還された、映画監督の林悟朗さんです!

 林監督、今日はよろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしく」

「林監督は、SF映画に数々の革新的手法を取り入れられ、我が国を代表する映画監督として世界に名を轟かしていらっしゃいました。そして、今から五十二年前、全く新しいインスピレーションを求めて、宇宙船レガレクス号に搭乗され、前人未到の宇宙に勇敢に旅立たれたのです。当時私はまだ生まれていませんが、映画史に燦然と輝く監督のお名前は存じ上げております。

 今日は、当時をご存知の映画評論家、吉村重彦先生にお越しいただいております」

「こんにちは。かくいう私も小さかったのでよく覚えとらんのですが、レガレクス号が地球を飛び立つシーンは、テレビの生中継で拝見しましたね。いやあ、懐かしい。長生きはするもんや。今では監督の年齢を追い越してしまいましたがねえ。亜光速で飛行されている林監督にとっては、五年間しか経っておらんということですが。

 林監督の目に、体感として四十七年先の未来の映像技術がどう映ったか、非常に興味ぶかくあります。その点、いかがでしょうか?」

「ううん・・・、地球は色々と様変わりしたみたいだけども、思ったほど劇的に変じたということはありませんな」

「そうですか・・・。とは言え、映画の技術はかなり進歩したでしょう?」

「一進一退と言いますか。僕の時代に当たり前だった技術は、この時代ではほとんどが僕の全く知らない技術に置き換えられている。それには大層驚いたけど、置き換えられる前の古い技術は、大人が子供に逆戻りするように退行している。必要ない技術は担い手がいなくなって、廃れていくのは自然の理なんでしょう」

「でも、画質は格段に良くなったでしょう?」

「そうかなあ・・・?いや、そんなに変わんないよ?」

「・・・そうでしょうか。あ、ほら、ご覧ください。今画面いっぱいに林監督の映画の一場面が映っています。今より画質が悪いように思います」

「ああ・・・、こりゃあひどく劣化したもんだ。当時はもっときれいだったんだけどなあ・・・」

「・・・」

「・・・」

2021/05/03起筆

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