ある中年男の備忘録
ある中年男性の備忘録より。
H28 08/06 17:46
どうやら私は、記憶が変わってしまう病に罹ったようである。今日の午前に医者に見せたそうだが、その記憶もなく、代わりに、その時間は家で仕事をしていた記憶がある。
妻によると、医者に見せるのも一苦労であったという。医者に見せていないのに、医者に見せたという記憶が生じてしまったからだ。家族の介助によって、何とか医者に見せることができたのだが、結局、原因は判らずじまいだったそうだ。
このままでは、生活や仕事にも支障が出るので、今後、出来事を具に記録してゆこうと思い立ったことを、ここに記録する。
自宅の書斎にて、仕事の合間に記録。
今朝の食事:ハム・エッグ
〃 23:05
17:46の記録をつけた記憶がない。その時間は、上川さんと一年振りに会って、商談をしていたと思っていた。記録をつけることの意義が、早速確認されたということを、ここに記録する。
さて、現在私は、就寝せんとしている。
08/08 06:28
昨日の記録を読むに、どうやら、一昨日は徹夜で読書をしていたのではなかったようだ。
出来の悪いインターネット小説に出会い、阿呆らしさのあまり失笑したと記憶しているのだが、そもそも、そんな小説はこの世に存在しなかったのだ。
それにしても、実にくだらなかった。たしか、坂本なにがしの何やら実験・・・忘れた。
今日の朝食:ハム・エッグ
09/01 12:30
午前中に終わらせた仕事:******
昼食を終え、現在、買い物をしている。
今朝の食事:ハム・エッグ
〃 14:58
八時間にも及ぶ事情聴取から、漸く開放された。
追記:
直前の記録を読んで、誤認逮捕されたという記憶そのものが誤りであったと判明した。
10/21 06:01
昨日の深夜、寝ている私の許に宇宙人が訪ねてきた記憶があるのだが、これは事実ではあるまい。
流石に、就寝中の記録は付けられない。そのことの不便に気付いたことを、ここに記録する。
今朝の食事:ハム・エッグ
12/25 02:35
コンビニエンス・ストアから帰るさ、目の前で、浮遊する巨大な桃色の立方体と、銀色の巨人とが戦っている。陳腐な怪獣映画のようだ。
実際に目前で起こっていることなのだが、信じ難い光景である。こうして記録しなければ、後に、これも偽りの記憶と思い定めてしまうことだろう。だが、少なくとも今の私の目には、この光景が映っているのだ。私の病が幻覚症状まで伴いはじめたのでないならば、これはまぎれもなく、事実なのだ。
12/26 06/03
私の病は、どうやら幻覚症状を伴い始めたようだ。
昨夜は、一晩中仕事をしていたのだ。したがって、怪獣と巨人など、見てはいない。それなのに、あのような記録をつけるとは、いよいよ、私の病は深刻化したようだ。もはや、記録をつける意味もないのだろうから、これで終いにしようと思う。
今日の朝食:ハム・エッグ
2017/04/04起筆




