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クオリア—あゆむとヤクザの約束—  作者: Tatsuya.Miwakami
28/30

28 再会

 およそ一月後、五十嵐と千尋は山崎の運転で、歩の病院に向かっていた。


 この日の朝、山崎が千尋と共に五十嵐の見舞いに訪れた。

山崎は熨斗紙付きの高級フルーツを冷蔵庫の上に置き、

「社長、ご無事でなによりです」

と、深々と頭を下げた。

「山崎、今回は色々助かったよ」

「いえ、お二人ともご無事でなによりです」

その時、千尋が山崎に目で合図をした。

山崎が気付き、手提げ袋から白い箱を取り出す。

「社長、コロボです」

「え!?」

千尋が微笑みながら、やり取りを見守る。

山崎が箱から取り出したコロボは、新品の様に綺麗だった。

「山崎お前・・・買って来たのか?」

「はい、いえ・・・」

千尋が割って入る。

「ひろちゃん、山崎さん、あの日遅くに倉庫に行ったんだよ」

「お前、本当か?なぜ黙ってた?」

「すみません!私は何も知らない立場ですから・・・しかし、社長と千尋さんが心配で、夜遅くに倉庫に行きました。すみません!」

「お前・・・謝ることないだろ。俺の方こそお前には連絡すらせず、お前の気を揉ませた。すまなかった」

「いえ!そんな・・・」

山崎は勝手な行動を責められると思い、臆していた。

見かねて千尋が補足する。

「山崎さんが着いた時には倉庫はもぬけの殻で、壊れたコロボが転がってたのよね」

「はい。そのロボットのオモチャが何かは知りませんでしたが、なんか見捨てておけなくて・・・」

「それで、山崎さんは細かい破片も出来るだけ拾い集めて保管してくれてて、少し前に私に連絡くれたの」

「そうだったのか・・・」

「でねひろちゃん、ダメ元で山崎さんにコロボの修理先を探してもらったら・・・ジャーン!」

千尋はコロボを指差す。

「じゃあ、このコロボは新品じゃなく、あの時のコロボか・・・しかし、よくここまで治ったな・・・」

「はい。カスタマーセンターの話だと、さすがに電子回路は全部取り換えになりましたが、一部の手足を除いては、ほぼ前のコロボです」

「そうかぁ」

「山崎、心から礼を言う」

五十嵐が頭を下げる。

「社長!やめてください!」

「でね、ひろちゃん。この前山崎さんから修理の目処がついたって連絡もらったから、私一度歩君のご両親に会って来たの」

「え?お前・・・いつの間に・・・」

「へへ、ひろちゃんが惰眠を貪ってる間に、我々は工作活動してました」

「惰眠て、お前なぁ・・・」

「そしたら、歩君のご両親、南美さんと真さんも、コロボに興味持ってくれて、あ、あと担当の先生も!」

「そうだったのか・・・」

「だからひろちゃん、今日、歩君に会いに行くよ!」


二人を乗せた車は、歩が今も眠る病院に到着した。

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