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クオリア—あゆむとヤクザの約束—  作者: Tatsuya.Miwakami
22/30

22 希望

 五十嵐が倉庫に入る少し前、歩の病院では、主治医の伊達と歩の両親が話をしていた。デスクのパソコンには歩の脳波計のグラフが表示されている。


「じゃあ先生、歩にその・・・意識がある可能性があると・・・」

南美も真も、信じられないといった面持ちで伊達を見る。

「ええ。ただ、あくまでも可能性ですから、過度な期待はしないでください」

「脳波専門の病院で詳しく調べてみる必要は、もちろんあります」

「でも先生、そんな、不確実な状態でなぜ私たちに話してくれるんですか?」

南美が尋ねる。

「はい。それは、ご両親が歩君に意識があると信じて呼びかけ続けることで、意識が戻る可能性を高められるんじゃないかと、そう思いました」

「科学的な根拠はないですよ」

「いえ、先生。ありがとうございます!」

「なんだか、希望が湧いてきました!」

南美と真は顔を見合わせて頷く。

「お二人なら必ず、そう仰ると思いました」

伊達が笑顔で答える。


 診察室を出た三人は歩の病室に向かった。

病室の扉を開けながら伊達が、

「あらためて脳波計を見てみましょうか。通常の状態を覚えておけば、変化が生じた時に気付きやすいですから」

とベッドを囲うカーテンを開いた。

すると、歩の脳波計のグラフが大きく上下に振れている。

伊達が慌てて脳波計に駆け寄りモニターに顔を近づけ、食い入るように見る。

「佐藤さん!これですっ!この動きです!」

興奮した伊達が目を見開きモニターを指差す。

「β波が活発に・・・信じられない・・・なぜだ・・・」

伊達はモニターと歩を交互に見比べる。

歩の外観はいつもと変わらずに、穏やかに寝ているだけだ。

南美と真もベッドに駆け寄り、両側から歩の顔を覗き込む。

「あ・・・」

南美が何かに気づく。

「歩の・・・先生、歩がうっすら汗をかいています」

「え!?」

伊達も歩に顔を近づける。

「たしかに・・・本当にほんのうっすら、汗ばんでますね。歩君が意識不明になってから、初めて見ました…」

「歩、あゆむ」

「あゆむ!」

2年間眠り続けている歩の意識が戻るかもしれない。南美と真は必死に歩の名前を呼び続けた。

倉庫で五十嵐と合流した歩の脳波計は、上下に激しく折れ線を描いていた。

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