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クオリア—あゆむとヤクザの約束—  作者: Tatsuya.Miwakami
20/30

20 異常値

 同じ頃、歩の病室でメーカーのエンジニアが医療器機を確認していた。傍らには担当医の伊達も居る。

 伊達は月に一度、歩の心電図や血圧、脳波などをまとめて確認し、容体が安定しているかを定点観測している。


 昨夜、いつもの様に1ヶ月分をチェックしていたところ、脳波に異常値を発見した。

平常時には考えられない脳波が時々出ている。

「なんだろう・・・これは?」

時系列のグラフを目で追うと、その脳波は、ある日を境に出現していた。

伊達は、一帯で停電が起きた日を境に異常値が出現していると特定した。

「まさか停電の影響で脳波計が故障した?」

機器にエラーがあっては大変な事になる。

そのため、メーカーのエンジニアに至急調査を依頼したのだった。


「どうですか?」

「先生、機械に異常は見当たらないですね」

エンジニアは、アタッシュケースの中にパソコンやら測定器が綺麗に収まった検査機器を見ながら答える。

「そうですか・・・」

伊達は腑に落ちず説明を始めた。

「この異常値の脳波は・・・健常者と変わらない波形なんですよ。つまり、脳波だけを見ると、普通に意識があり、外からの刺激に反応していると判断出来るのです」

「う〜ん、先生そう言われましても・・・ウチの機械にも異常は見当たらないんですよぉ・・・」

「他の病室のウチの機械にも異常値が出てましたか?」

エンジニアが困惑した顔を向ける。

たしかにエンジニアの言う通り、他の機械は停電後も正常に稼働している。


「わかりました。ありがとうございました」

エンジニアは首を傾げながら帰って行った。


 伊達は一人になった病室で、歩をじっと見ていた。手には、歩の脳波のプリントを持ったままだ。

目の前の歩はいつもと変わらない。

ただすーすーと寝息を立てている。

「もしかしたら・・・」

伊達は歩を見つめながら、小さくつぶやいた。

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