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4殺目A もう死んでおりますが

ウ~ちゃんパートです。

ガッちゃんパートはBです。

 「ううぅ!?」


 ウ~ちゃんはドキをムネムネさせて開けた宝箱から、横倒しの状態で膝を抱えた女の子が出てきたのでびっくりした。当たり前である。宝箱の中には素敵なものが入っていなくてはならないのだから。人の子は振り回すとすぐに壊れるので論外だ。あと、箱の中が色々臭い。

 まさかこれが噂のミミックか!?そう思ったウ~ちゃんは再びチェーンソーを取り出そうとするが・・・


 「お腹・・・空いた・・・たす・・けてっ・・・」


 「う~!?」


 女の子が鳥ガラのように萎びた首から声を絞る。ウ~ちゃんは取り出そうとした手を引っ込め、声の主を見る。彼女は体中が痣だらけであり、手首や足首が擦り切れている。さらに、2つの赤目は光を失って曇りかけながらも、目の前の大男に必死で訴えかけていた。


 「う~・・・」


 ウ~ちゃんはそのボロボロの女の子を見て思った。殺してもつまらなそうな奴だな、と。


 いくら殺戮快楽者のウ~ちゃんでも、死にかけを嬲るほど落ちぶれてはいない。狩るのはやはり活きが良いのでないといけない。ウ~ちゃんは殺人ソムリエなのである。

 なので早く殺し甲斐が出るように、ウ~ちゃんは先ほど手に入れた薬草を女の子にくれてやった。ぶっちゃけウ~ちゃんはケガをしない。仮にチェーンソーがキックバックして刃が顔に当たっても、切れることは絶対に無いのである。


 「ぐぼぉ!?」


 そして、無理矢理口に薬草を押し込まれた女の子は、体の調子をある程度回復・・・


 「カハァ!ゲ・・・グゲゲゴ・・・」


 しなかった。むしろ悪化した。まあ、良い感じで叫んでいるのでそのうち元気になるだろう。そう考えていると、口から白煙を吐きながら、女の子は声を出した。


 「薬草じゃな・・くて、周りにある・・・死体・・・を入れ・・・て・・・」


 「う~?」


 女の子が言っている意味が分からず、訝し気な表情を仮面の下で浮かべるウ~ちゃんだったが、とりあえず辺りに散乱している肉塊となり果てた雑魚共と、かっこつけの死体を宝箱に放り込む。すると、女の子は今まで何だったのかと思うくらいのスピードで死体に齧り付いた。


 「グチャバリボリメチャクチャガリジュルンッ・・・!」


 「うっ!う~♪」


 ウ~ちゃんは彼女の食べっぷりを見て一瞬驚いたものの、すぐに慣れ、面白いものを見るように上機嫌になった。そしてさっきの、『殺してつまらなそうな奴』という評価を訂正した。


 こいつ、俺と同類だと・・・。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 「ふーっ、助かりまっした!まずはありがとうございまっす!」


 「う~?う~?」


 死体を全て平らげた女の子は、入っていた宝箱に腰を掛けながらウ~ちゃんにお礼を述べる。体のどこにあの量を収めたのか?不思議そうにウ~ちゃんは首を捻ったが、女の子は言葉を続ける。


 「いや~っ人生はいつどこで何があるのか分かりまっせんねぇ~!もう死んでおりまっすが」


 「う?う?う?」


 気になる言葉を放った女の子に対して、ウ~ちゃんはさらに疑問符を頭に3つ浮かべた。その様子を見て察したのか女の子は、自分のことを話し始める。


 「あ~把握。私、いわゆるゾンビでっす。数か月前に洞窟でここの奴等を食おうとしたら、宝箱に閉じ込められてそのまま拉致られまっした」


 ミイラ取りがミイラになるということわざの意味を改めて理解したウ~ちゃん。この場合はミイラでは無くゾンビだろうか?


 「奴等は私を使って何かしようと企んでたそうでっすが、萎びて動けなかった私に何を見出したんでっしょうねぇ~」


語尾がしつこい彼女にイラつきながら、ウ~ちゃんは元気になった彼女を改めて見やる。

 見た目15歳ぐらいでボロ切れを纏った彼女は、宝箱に入っていた時と比べて肌がツヤツヤになっており、ゴワゴワだった長い黒髪も、どういう原理か分からないがサラサラになっている。そして、光を失っていた赤目は爛々と輝いていた。

 ただ、肌の色はすこぶる悪い。ツヤとハリはあるが、色が悪い。何故ならその色は、気持ち悪いくらいに蒼白だったからである。弱っていた時は茶色だったのに。あと、肌から腐った臭いもする。箱の中に充満していたのはそれが原因だろう。


 「それにしても、あんちゃんはすんごい腕っぷしでっすね。奴等、ここら一帯ではヤバめでっしたのに」


 そんな風に考えていると、女の子はどんどん喋る。さっきまで死体をボリボリ食っていた奴には見えない。


 「私は自分より強い奴等を食らって強くなろうとしたのに、あんちゃんはそれを無傷で蹴散らしたんでっすよ!?まあ、最終的にはこうしてガブガブ出来ましたっけど・・・、あんちゃんにはまだ全然敵わなそうでっす」


 「う!?」


 敵ったら食うのか?ウ~ちゃんは珍しく突っ込みを入れる。すると、再び察したのか女の子は、


 「あ~把握。仮に敵ったとしても、あんちゃんは襲わないでっすよ。助けてもらった相手を襲う程、私も落ちぶれ・・・すみません、やってまっした。でもあんちゃんは襲わないでっす。勘がそう言っているので間違いないでっす」


 「う~・・・」


 ウ~ちゃんはたじろいでいた。自分にここまでボケとマシンガントークをかましてくる奴はいなかったし、第一、ウ~ちゃんがすぐに輪切りにしてしまい、会話にならないからである。

 そんな彼の様子にお構いなく、女の子はさらにさらに話し出す。察しが良いのか悪いのか、もうめちゃくちゃである。


 「あ~私の名前まだ言ってませんでっしたね。私はイルニスでっす。名字は生前の記憶共々覚えてないでっす。気づいたら墓の中っでした。ところで、あんちゃんのは?」


 今更自己紹介を始める女の子、イルニスはウ~ちゃんに名前を尋ねる。それに対しウ~ちゃんは


 「う~」


 「把握。これからウ~さんって呼びまっすね。よろしくお願いしまっす!」


 「う???????」


 なんだこいつ。意味が分からない。疑問符が7つも出てしまったウーちゃんだが、イルニスは宝箱から腰を上げてかっこいいポーズを取る。そしてそのままウ~ちゃんを指差し、ニヤリと笑いながら疑問だらけの彼に向かって言い放った。


 「把握把握。だってウ~さんは私と『同類』だっから・・・」


 こうして、殺人鬼はゾンビと仲間になった。


メインヒロインに似た何か+ウ~ちゃんの翻訳係を出してみました。ガッちゃんパートは本日投稿予定。

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