10殺目A うっかり分隊長
ウ~ちゃんパート。魔王も出るよ!
「魔王様!デカイ大陸の王国ファストで、勇者が召喚されたとの情報を聞きました!」
時は遡って昨日の夜中。ファストでの惨劇が一応片付き皆が寝静まった頃、地獄から浮上したワイコ大陸の王国、マオーノの城で、大柄な男が小柄な男を引き連れ、玉座に腰かけている魔王と謁見していた。
「うんうん。そろそろするだろうと思ってたんだよね~。せっかちだからあそこの王様。それでガトー君、その隣のち~ちゃい男は誰?」
「は!私の隣の男は私の部下であり、今回の情報を証拠付きで持ってきた者であります!」
「なるほどね~。良い仕事したね君。名前は何て言うの~?」
ガトーと呼ばれた大柄な男は、魔王に言われて隣の男を紹介する。魔王が短い足を交互に振りながら視線をガトーから小柄な男に移し、まじまじと彼を眺めてから称賛の言葉を発した。
「わ、私めにもったいなきお言葉をありがとうございます・・・!私はガトーさんの下で分隊長を任されておりますショーン・コラッテと申します・・・!」
小柄な男、ショーンは片膝を着きながら、感激に身を震わせ自分の名を言った。動作一つ一つに彼の魔王への忠誠が表れており、特に尖った尻尾はブンブン回っている。
「うんうん。それで、証拠を見せてよ」
「はい!こちらがその証拠でございます!隙を見計らってファストの兵士に盗聴道具くっ付け、そこから拾った音をこの受信道具に保存しました!」
ショーンは誉めて誉めてと言わんばかりに証拠を提示した。それはいわゆる小型ラジオ程ようなであり、スピーカーらしきものも付いている。
「早く早く。聞かせて~。」
「はい!それでは、ポチリ」
魔王に急かされて、ショーはドヤ顔で受信道具のボタンを押す。すると、直ちに拾った音声が再生されて・・・
『・・・・・勇者の召喚か。これでこの国含めて世界が救われると良いが・・・。』
『・・・・・召喚されたか!・・・・・明日にはすぐ出発・・・。勇者も大変だろうに・・・。』
『・・・・・正門の方が騒がしいな。明日って伝達係が言っていたのに、もう出るのか?・・・・・』
『・・・・・なっ!?ぐわああああああブツンッ!・・・・・・・・・』
―――そこで再生が終わった。
「なるほどね~。最後が気になるけど何だったの?」
「盗聴ですので何があったかは分かりかねますが、不意な痛手をこうむった可能性が高いです。奇襲にはもってこいの状況でしょう」
やはり最後の叫び声が気になる魔王。そりゃそうだ。奴が暴れたんですもの。それを知る由もない魔王は、ショーンの奇襲というと単語を聞いてニヤリと口元を歪ませる。
「いいね~奇襲!やろうやろう!んじゃ、ガトー君はドロリンコ決死隊で草原全体を牽制しといて。ショーン君は続けて勇者の動向を探りつつ、機会が来たらズバッとやってね。よろしく~」
「「はっ!!」」
ガトーとショーンはキャッキャとはしゃいでいる魔王から指示を受けると、何やら魔法を唱える。すると、2人の姿は魔王の前からシュンと消え、ちっちゃい魔王が1人取り残される。
「くふふ・・・。いいねぇいいねぇノッてるよ!戦地はこっち優勢だし人質取ってるし、ダメ押しの勇者やファストへの奇襲ができそうだし、うほっほい!」
1人であるにも拘らず、楽しみが目前に迫っている子供のような声を溢す魔王。ファストを落とせば、現在唯一の不安材料である勇者召喚が出来なくなる。それを成せる可能性が思ってもいないところで出てきたので、もうウハウハだ。脳内麻薬ドバドバである。
「早く結果来るといいな~」
ゴキゲンな魔王様。その気分は、今日だけのものであるとは知らずに・・・
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「う~!」
「あぎゃあああああああああああああああああ!!」
思いっきりぶん殴るウ~ちゃん。派手に吹っ飛ぶショーン。横からやんややんやしてるイルニス。ショーンは吹っ飛びながら、衝撃で震え続ける脳を必死に活動させた。
(何だコイツらは!いや、筋肉マッチョな男は勇者には間違いないだろう。地図を見ながら町を出ていたから、土地勘が無いのは確かだ。あと、この山道は余程の手慣れじゃないと来ない所だ。勇者は強いはずだから、気にすることは無いだろう。船も手に入るし。でも、こんなに強いのか?「勇者はすぐに強くなるが、今はまだ勝てる相手のはずだ」とガトーさんは言っていたが、何で?どうして?俺でも倒すのに時間かかるグリンオーガ瞬殺だよ?それも複数。おかしいよね?勇者の横の女もそれなりに強いみたいだし・・・あ!そうか!女にレベル上げ手伝ってもらったんだ!きっとそうだ!それならあり得る!でも、何か勇者戦い慣れていない?いや、殺し慣れてるでしょこれ絶対!コイツ殺し大好き野郎だ!俺やガトーさんとは違う、純粋に殺しを楽しむ奴だ!ん?そう考えると隣の女・・・あ!同じ雰囲気だ!ヤバい!マジでヤバい!死んじゃう!ピチュンしちゃう!なんでこんなのを勇者召喚したの?ダメでしょ!思ってた勇者と違うでしょ!もっと正義に溢れてなきゃダメでしょ!)
先程までの戦士らしさが全然ない思考である。それだけ彼は必至であった。彼自身、死んだ経験は数回あるのだが、死ぬ度に地獄で針山を登らなくてはいけないので死ぬのはもう御免であった。
(一旦ここは引いてガトーさんと合流す・・・あ、吹っ飛んでいるとこに追い付いてこないで。頭掴まないで。あっ痛い。つぶ・・・つぶれるううううううううう!)
「うひょひょひょっひょひょー!逝けーーーっ!」
「う~☆」
「うぴょ!?」
ショーンの願い及ばず、彼の頭は卵のように潰れてしまった。ウ~ちゃんの手のひらは黒い肉塊と黄緑の液体でベトベトである。悪魔の血はやっぱり赤じゃなかった、とウ~ちゃんは満足げに自らの手を眺めた。
「なんっか、鼻の曲がる匂いがするんで食べたくないでっす。先行きまっしょ?」
「う~」
鼻を摘まんでクサイクサイしているイルニスに言われて、ウ~ちゃん一行は再び山道を進み始める。頭を潰された悪魔は再び針山を登る羽目になるのだが、それはまた別のお話。
祝10話!ちゃんと続けますから良い所や悪い所をどんどん指摘お願いします。ハッキリ言ってもらえると助かります。




