0殺目 召喚!(ただし余計なものを含む)
※このお話は残酷な描写や暴力的表現、もしくはブラックなジョークが含まれております。頭を空っぽにしてお楽しみください。
涼しくなってきたある日のこと、暗い夜道の中、1人の男子学生が走っている。
「ハァ・・・ハァ・・・」
その顔は悲壮と焦燥に彩られており、逸る心は彼の足よりも速い。そのことにいら立ちを感じながらも、男子学生は後ろから迫る恐怖から逃れようとしていた。
「・・・・・」
その無言で迫ってくるものとは、男であった。
身長が190cmちょっとあり、アニメのゴリラキャラばりの幅の広い体格を緑のコートで包んだ大男は、手に何か唸るものを携えて男子学生を仮面の向こうから睨みつけていた。
仮面はアイスホッケーマスク、もしくはそれに似たものであり、その下の表情を窺うことはできない。
ここは日本の田園地帯。辺りには田んぼしかなく民家からはかなり離れている。部活終わりに田んぼ脇の道路を歩いていた男子学生は、突如暗闇から現れた大男に追われる羽目になったのだ。
ただ、その男が何も持っていなかったら、野球部である男子学生はちょうど家に持って帰ろうとしていた自分のバットである程度応戦することができただろう。成功するかどうかは別として。
しかし、男はモノを持っていたということで、そのものとは・・・
―――ブオオオオオオオオオオオオオオオン!!
「ぎゃああああああああああああああ!!」
そう。仮面の大男は、持っていなければ逆におかしい程のマストアイテム、チェーンソーを両手で構えていた。ちなみに、本来の某金曜日の方はそれを持ったことは一度も無い。
―――ブオオオオオオオオオオオオオオオン!!
「やめてえええええええええええええええ!!」
男子学生は脱兎の如く走る走る。しかし、大男も負けじと走る走る。
その光景が夕方の砂浜で、夕陽をバックに追いかけっこをする男女なら青春の1ページとして絵になるだろう。
しかし現状は、夜の田園地帯で、もうすぐ刈り取り時期の稲をバックに命の駆け引きをする男2人である。青春どころか、追い付かれたらトラウマの1ページすら消えて無くなってしまうこと請負である。
「そんなのいやああああああああああああ!」
人生最後の思い出を殺人鬼との追いかけっこにしたくない男子学生は、それはもう死にたくはないが死ぬ気で走った。魂の叫びが田園に空しく響く。
「・・・・・」
それに対して無言の大男は、まるで弄ぶように男子学生との距離を維持する。
いつまで男2人はチェイスしていただろうか。ついに男子学生の方が息を切らし、スピードを緩めてしまった。
「ゼハァ~・・・ゼハッ・・んぐっ!」
悲しいかな。それを見逃さなかった大男は右手にチェーンソーを持ち、左手で男子学生の首根っこを手で掴んできた。
そして、大男がこのまま男子学生をうつ伏せに押し倒し、チェーンソーで切り刻もうとした・・・その時だ。
―――シュゴオオオオオオオオオ・・・
「な・・・今度は何!?」
「・・・う?」
突如足元から金色の光が輝きだしたかと思うと、その光は男子学生と・・・押し倒そうとしている大男を包んだ。これには大男もびっくりして疑問の声を出した。
「これってもしかして・・・魔法陣?」
そう。2人の足元に現れた光の正体は、男子学生がマンガやゲームでよく見る類の魔法陣だったのである。
しかし光がなんだとお構いなしに、大男が前進して男子学生のバランスを崩そうとしている。その瞬間・・・
―――パッ!
2人の姿は田園地帯の真ん中から消えた。