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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二百八十六 玲那編 「みんなでカレー作り」

家に帰るとやっぱりお風呂の用意をしてビデオ通話をONにして『おかえりなさい』と四人で挨拶して、夕食の用意を始めた。明日がカレーだから今日は手作りハンバーグにした。沙奈子のやり方を見ながら僕もこれくらいはできるようになった方がいいかなと思った。


四個作って今日は二個食べて、残りは明日の夕食にすることになった。


夕食の後にお風呂に入ってほっこりした。その後は、いつものように莉奈の服作りをする沙奈子を膝にゆっくりした。すると、かなり完成に近付いたらしくて僕にもドレスだって分かる形になってきた。って言うか、フリルが何重にもなってレースがあしらわれた、もう本格的なドレスじゃないか。これを沙奈子が作ってたっていうのか…。


すごい。絵里奈の指導を受けながらって言っても10歳の子がこれを作ったっていうのは素直に驚くしかないと思った。僕から見ればこの時点でもう十分に商品になりそうな気もする。そして、玲那の事件の前から作り始めてたドレスがようやく完成したのだった。


「やった、沙奈子ちゃん!。頑張ったね!」


『すごいすごい沙奈子ちゃん。キレイ!』


絵里奈と玲那に褒められて、沙奈子はちょっと照れ臭そうにはにかみながらも嬉しそうな顔になった。それでさっそく、莉奈に着せてみた。それまでのシンプルな感じのドレスから、いかにもドレスっていう感じのドレスらしいドレスだった。この子はもう、ここまでのものを作れるようになったんだ。いやもうこれは本当に才能ってもんじゃないのかな。


この子にもし、こういう物作りの才能があるのなら、それを伸ばしてあげたいと改めて思った。それがこの子自身の生きる力にもなるはずだし。僕の娘がこんなすごいことができるっていうのは、正直言って自慢したいくらいだ。


ああでも落ち着け落ち着け。そこで僕が興奮してどうするんだ。この子自身のことなんだからこの子が自分で決めることだ。でもこういうのを見てしまうと、ついいろいろ考えてしまうよなあ。


明日は土曜日だしせっかくだしということで一気に完成させたら10時を回ってしまってたけど、なんかすごい達成感もあった気がする。って、僕が作ったんじゃないけどさ。


机の上には新しいドレスを着た莉奈と、それを囲むように果奈とイルカとオオサンショウウオのぬいぐるみが佇んでた。なんかいいなと思ってしまった。


そんな感じでちょっと気持ちが上がった感もありつつ、絵里奈や玲那と『おやすみなさい』をして、僕と沙奈子は布団にもぐった。改めて『おやすみなさいのキス』を額にすると彼女もお返しのキスを頬にしてくれて、僕の胸に顔をうずめてきた。でも今日はいつもと違ってすぐに眠れなかったらしい。少しもぞもぞする気配があって、さらに僕の胸に顔を押し付けてきた。


もしかしたらドレスが完成したことが嬉しくて興奮してるのかもしれないな。そう思って、赤ん坊をあやすみたいに彼女の体に軽くとんとんと触れてあげた。しばらくそうしてると、ようやく、すー、すー、と小さく寝息を立て始めたのだった。




土曜日の朝。今日は、千早ちはやちゃんたちがカレーを作りに来たり、その後は絵里奈と玲那に会いに行ったりとまあまあ忙しい一日だ。二人で朝食を用意して、ビデオ通話越しに四人で一緒に食べて、掃除して洗濯して午前の勉強をして。


勉強が終わってしばらくすると、玄関のチャイムが鳴らされた。。千早ちゃんたちかなと思って見たらお惣菜を届けに来た宅配業者の人だった。それを受け取って少しすると、またチャイムが鳴らされた。今度は千早ちゃんたちだった。


「お~っ!?」


「わあ、すごい」


玄関を開けて千早ちゃんと大希ひろきくんが入ってくると、テレビの画面に大写しになった絵里奈と玲那の姿を見て、そんな風に声を上げてた。


「こんにちは!」


画面の向こうの二人にもそう言ってちゃんと挨拶してくれる。ホントにいい子たちだなあ。さすがにテレビのところに置いてるとよく見えないのでケーブルを外してノートPCを椅子に乗せて、キッチンの脇に置いた。絵里奈の指示を受けながら、沙奈子と千早ちゃんと大希くんはさっそくカレー作りを始める。


材料はいつものように星谷ひかりたにさんが用意してくれてた。しかも、千早ちゃんと大希くんが使う子供用の包丁も用意されてた。相変わらず準備万端だ。だけど、どうしてもまだ力が弱いし手も小さいから人参やジャガイモの皮むきは無理せずピーラーを使ってやる。


皮をむいたニンジンやジャガイモを、千早ちゃんと大希くんが並んで丁寧に切っていった。急がず、焦らず、怪我をしないように丁寧に。


包丁を使う時には猫の手だっていうのは二人とももう知ってたみたいだった。山仁やまひとさんの家でもイチコさんや星谷さんに見てもらいながら、少しだけど料理の手伝いとかはやってたらしい。だからいつも通りに現場監督っぽく見守ってる沙奈子もそんなに忙しそうじゃなかった。「ゆっくりやってね」と、安全第一ってことを念押ししてるくらいだった。


今日は千早ちゃんと大希くんと星谷さんも食べるから肉も入れる。星谷さんの好みでサイコロステーキ用の牛肉が用意されてた。


そうやって三人でキッチンで仲良く作業をしてる様子を見てたけど、だから余計に、大希くんの体の小ささが改めて目についてしまった。沙奈子も決して背が高い方じゃないのに、その沙奈子よりも明らかに小さかった。山仁さんは170㎝ある僕と同じくらいだから決して小さい人じゃないのに、大希くんは小柄なんだなと思ってしまった。


本人がすごく元気だし健康そうだし何か病気とかあるとも聞いてないからたまたまなんだとしても、男の子だとそのうち気にし始めるんじゃないかなと思ってしまった。


後で聞いた話だと、実際、大希くん自身も気にし始めてるらしい。体に異常はないそうだから本当にたまたまらしいということで様子を見るしかないようだ。髪は短いけど優しい柔和な顔つきとも相まってやっぱり女の子にも見えてしまって、それも気にし始めてるとのことだった。ただ、その可愛らしさが女の子、特に年上の女の子たちに人気らしくて、中学生とか高校生とかの女の子からは『カワイイ~!』の大合唱なんだって。でも、男の子としては『カワイイ』と言われるのは不本意なんだろうなと思ってしまったりもした。


でも、そんなこんなはさて置いて、カレーの方はすごく順調に進んでもう煮込みに入ってた。あとは焦がさないようにしながらじっくりと煮込むだけだ。ご飯の用意はもうできてる。沙奈子たちは交代でカレーの鍋をかき混ぜながら自分達が作ったそれを嬉しそうに覗き込んでいた。


そして完成したカレーをみんなで食べた。子供たちに合わせて甘口にしてたけど、僕も普段は沙奈子に合わせて甘口を食べてたから違和感もなく美味しいと思えたのだった。



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