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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二百七十八 玲那編 「これからのいろいろ」

僕たちがお風呂に入ってる間に、絵里奈もお風呂に入ってたみたいだった。ビデオ通話の画面には玲那だけがいて、沙奈子が莉奈の服を作ってるところを嬉しそうに見てた。たとえ画面越しでも、こうやって沙奈子のことを見守ってられることが本当に嬉しいんだと思った。


そうしてるうちに絵里奈がお風呂から上がってきて、代わりに玲那が手を振りながらお風呂に行った。絵里奈が画面をのぞき込むと、さっそく沙奈子にいろいろと指示を出してた。僕には何を言ってるのか分からないけど、この子には分かるらしい。ちゃんとその通りに動いてるみたいだった。


しばらくして玲那も画面の中に戻ってきた。そして僕たちはまた四人揃って一時を過ごした。


何だかんだで夢中になってしまって、気付けば結局また10時前だった。でも明日は日曜日だから別にいいか。布団を敷いて寝る用意をして、「おやすみなさい」とみんなでキスをする仕草をした。


ビデオ通話を終了させて沙奈子と二人で布団にもぐって、ぴったりと寄り添う。こればかりはまだどうしようもない。だから沙奈子が少しでも寂しくないように、僕も包み込むみたいにして抱き締めていた。それで安心したのか彼女はすぐに寝息を立て始め、僕はそれに耳を傾けた。


明後日からはいよいよ5年生として学校に通うことになる。大希ひろきくんや千早ちはやちゃんとまた一緒のクラスになれればいいのにな。と言っても、沙奈子の学校は生徒数がそんなに多くなくて、一学年で60人くらいしかいないから2クラスしかないんだ。だから一緒になる確率は高いと思う。それでも祈らずにはいられない。大希くんと千早ちゃんには本当に助けられたから。


そうだ。新しい担任の先生はどんな人だろう?。3月の終わりに離任式があって、水谷先生が転任してしまったと聞いた。玲那の事件があってからも、事情を知った上でいろいろ配慮してくれてすごくお世話になったのに、ほとんどお礼らしいお礼も言えないままになってしまった。転任することが分かった時に電話でお礼は言わせてもらったけど、もっとちゃんと話せばよかったと今になって後悔してる。玲那のことが心配で頭が回らなかったのもあるけどさ…。


それにしても、沙奈子が5年生か。高学年ってことになるんだな。そうそう、5年生になると集団登校の班の副班長っていうことになるらしい。6年生が班長で列の先頭に立ち、5年生が副班長として列の最後尾に立って低学年の子たちを引率するっていうことだった。僕たちの前ではしっかりしてるように見えるこの子も、そういうのになるとどうなんだろう。ちゃんとできるんだろうか。ついそんなことも考えてしまう。


そうして沙奈子のことを一通り考えると、今度はまた波多野さんのことが頭に浮かんできた。すると何とも言えない悔しさが込み上げてきて、やっぱり胸が苦しくなるのを感じた。自分の実のお兄さんを刑事告訴しなきゃならないなんて、何をどう間違ってそんなことになってしまったんだろう……。


本当に、早く終わって欲しいと願わずにはいれらないのだった。




日曜日の朝。朝食は焼き鮭だった。沙奈子と二人で用意して、ビデオ通話をONにして、四人で一緒に食べる。それから掃除して洗濯して午前の勉強をして。


沙奈子の勉強は、絵里奈が頑張ってくれたおかげで、もう4年生の半ばまで進んでた。つまり、すでに学校に通い始めてやったところの復習に入ってるってことだ。


そう、沙奈子の勉強の遅れは、これで事実上取り戻せたってことだと思う。なのにこの子はまだ、こうやって勉強を続けてくれてるんだ。一緒に勉強をするのが楽しいっていうのもあるのかもしれないけど、本当にすごいよ。


今日はもちろん、千早ちゃんたちがホットケーキを作りに来る。確か運動会の後くらいからだから、五ヶ月以上続いてるのか。よく飽きないなと思いつつも、僕ももう、これが普通って気がしてた。それに週に一回くらいなら大丈夫かな。週に二回以上だと、ちょっと辛いかも知れないけど、


そして勉強が終わって寛いでると、玄関のチャイムが鳴らされた。千早ちゃんたちだった。


「沙奈ちゃ~ん!」


すっかり恒例になった、跳び付くみたいにしてのぎゅーっに、沙奈子も嬉しそうに穏やかな顔になった。すごく笑ってるって感じの笑顔じゃないのが残念だけど、ちゃんと嬉しいっていうのは伝わってくるからあまりあれこれ言わない方がいいかも知れない。


ビデオ通話は繋いだままにしてたから、子供たちの分のホットケーキは子供たちに任せて、僕と星谷ひかりたにさんもカセットコンロでホットケーキを作り始めた。玲那はそれを羨ましそうに見てた。


『いいな~』ってメッセージが表示される。


実は絵里奈は、今、仕事に行ってた。漬物屋さんは正月の三日間以外は年中無休で営業してるから、絵里奈の休みは土曜日だけなんだ。だから土曜日に四人で会うっていうことになってた。でも、仕事は三時で終わるし、思ったほどは不自由でもないらしい。だから今日は、絵里奈の仕事が終わってから志緒里と兵長を迎えに来るってことになってた。玲那の場合は、3代目黒龍号も持っていかないといけないし。つまり、絵里奈と玲那に、ちょっとだけど会えるっていうことだ。


あまり長居をしてこの前のファミレスみたいなことがあったら嫌だからということで志緒里と兵長と3代目黒龍号を引き取ったらすぐに帰るらしいけどさ。


日曜日も、こうやってビデオ通話を繋いでおけば、玲那も一人きりにならなくて済む。平日、四時ごろに絵里奈が帰ってくるまでは一人になってしまうのも、今の玲那の様子を見ればそんなに心配は要らない気がする。それに志緒里と兵長が向こうの部屋に戻ればもっと寂しくなくなるはずだ。


玲那もしばらくの間はゆっくりしようってことになってた。なにしろ、貯えそのものは僕たち四人の中で一番多いから。アニメ関係のことにいろいろ使ったりしてたけど、絵里奈が管理してくれて月々ちゃんと残してたらしい。その当の絵里奈は人形関係で結構使ってしまったりして、今は玲那に負けてるそうだ。


通帳とかキャッシュカードとかは玲那の事件の場合は押収されなかったからすぐに使えるし、それを少しずつ取り崩して生活することになるらしい。


再就職は難しいかも知れないけど、ニュースとかが落ち着いたら少しずつ探すということになるのかな。


ただ、それまでの間も多少の足しになればということで、ちょっとしたアイデアがあった。仕事が早く終わるから少し時間があるし、絵里奈が手芸で作ったものをフリマサイトに出品して、玲那がそれを管理するっていうものだ。と言うのも、絵里奈は大学時代に実際にそれで月々数万円程度だけど稼いで学費に充ててたらしい。その時の経験が活きるかも知れないということだった。


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