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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百九十八 沙奈子編 「ありがとう」

「……」


いよいよもう起きてるのか寝てるのかも分からない感じになってきて、沙奈子は黙ってしまった。だけどまだ、『寝息』までは立ててないから、完全に寝てるわけじゃないのも分かる。だから僕は、彼女が完全に寝てしまうまでは付き合いたいと思った。


すると、小さく体を動かしてさらにくっついてきた沙奈子が、


「……お父さん……。お父さんが私のお父さんで……、本当に良かった……」


もう消え入りそうな声でそう口にした。そして、寝息を立て始める。


最後の最後に言ってくれた彼女の言葉に、


「うん……。お父さんもだよ。お父さんも沙奈子が娘で本当に良かった……。ありがとう……」


囁くように返す。


もうそれは彼女の耳には届いていないかもしれないけど、でも、別によかった。ただ僕がそう言いたかっただけだから。


結局、山下典膳やまもとてんぜんさんのことについての話は、ほとんどしなかった。時計を見ると四時間近く経ってたのにね。


でも、そんなものなのかもしれない。典膳さんが実の父親に似てたことは『思いがけない不幸』だったし、ショックも大きかったんだろうけど、イップスを思わせるような状態にまでなってしまうものだったけど、これは誰の責任でもないからね。誰が悪いわけでもない。強いて言うなら、彼女の心にそれほどの『爆弾』を仕掛けていった実の父親と、それこそどこの誰かも今ではまったく分からない実の母親に、その責任があるとは思うけど、それさえもう詮無いことなんじゃないかな。


『責任を取れ!』


と言ったところで消息さえ知れないし、知れたところで責任を取るような人たちだったらそもそも今の状態にはなってないはずだし。


だからもう、どうでもいい。あの人たちのことについては『天災』みたいなものだったんだってことで捨て置いていいと思う。いつかまた沙奈子の前に姿を現すことがあったとしても、だからこそ今回の経験を活かしてそれに備えるようにすればいいんじゃないかな。


沙奈子の『心』については僕と絵里奈と玲那と千早ちはやちゃんたちが守るし、法律的な面ではすごく頼りになる人も身近にいるし、そういう人間関係を築けてきたことがすごくよかったと素直に思える。


僕たち一人一人はとても非力でも、非力ななりに、ううん、非力だからこそ互いに支え合うことで生きていけると感じるんだ。それが『人間の生き方』なんだろうな。


そのためには、自分からわざわざ他の誰かを攻撃するのは避けた方がいいんだって分かるよ。そんなことをする人とは関わりたくないのは正直なところだからね。



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