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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千五百八十五 沙奈子編 「アピール」

『世の中には自分の子供が嫌がってるのに一緒にお風呂に入ったり強引にスキンシップを図ろうとする親もいるだろうから、それに対して備える必要は確かにあると思うし、そのために少しくらい疑われるだけなら仕方ないと思ってる』


僕のその言葉に、


『だけど、お父さんがそんな風に言われるのは嫌だな……』


と沙奈子は悲しそうな表情になった。だから僕は、沙奈子と一緒にお風呂に入ってたこととか、一緒に寝てたこととかを、


『僕たち父娘はこんなに仲良しなんだ』


みたいな形で世間に向かって喧伝しようとは思わないんだ。そんなことをしたらそれを変だと感じる人たちから間違いなくあれこれ言われるだろうからね。そこで、


『父娘が仲がいいのを変だとか言う方がおかしい』


的に言い返せばそれこそ火に油なんじゃないかな。だってそれって、


『自分こそが正しくてそれに異を唱える人間はおかしい』


と言ってるのと同じだろうから。そんな風に言われたらカッとなる人も少なくないのは、普通に人間というものを見てれば分かるような気がするんだけどな。僕のことの言い方にさえ嫌悪感を覚える人もいるだろうな。


これも、


『自分と自分じゃない人は違うという現実』


だよね。その現実と向き合うなら、


『自分の感覚を相手に押し付けようとするのは反発されることも少なくない』


って分かると思うんだけどな。


確かにそうやって押し付けられたことを真に受ける人や、『求めてた答を与えてもらえた』と感じる人も、いると思う。過激なことを口にする人が人気を集めたり、宗教に嵌まる人がいるのも、それなんじゃないかな。


だけど、そういう人ばっかりじゃないというのも事実だよね。自分の押し付けを肯定してくれる人だけを認めて、そうじゃない人については無視していい存在だと考えるのも、ただの『夢想主義』だと僕は考えてるんだ。


『この世には自分にとって都合のいい人しかない』


なんて有り得ないのにね。


『自分にとって都合のいいものだけを見るようにして精神の安定を図る』


というやり方もあってもおかしくはないと思っても、それだけになってしまうときっと人間関係なんて築けないと思う。僕がこう言ったらそれに対して『そんなことない!』って言う人もいるだろうなという事実を僕は認めなきゃと思ってる。


だからこそ、


「そうか。じゃあ、『自分たち家族はこんなに仲良しなんです』みたいなアピールは、あんまりしないようにしなくちゃね」


と言わせてもらった。これには沙奈子も、


「うん」


って頷いてくれた。



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